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垣田達哉「もうダマされない」

O157で女児死亡の惣菜店系列、原因不明のまま営業再開…厳格な対策には多額コスト

文=垣田達哉/消費者問題研究所代表
O157で女児死亡の惣菜店系列、原因不明のまま営業再開…厳格な対策には多額コストの画像1でりしゃすを運営するフレッシュコーポレーションのHPより

 9月7日、ポテトサラダを食べた人が、腸管出血性大腸菌O157による食中毒を起こしたとして、休業していた惣菜店「でりしゃす」の全17店舗が営業を再開したが、8日、「でりしゃす 六供店」の炒め物を食べた3歳の女児が死亡し、六供店は自主休業に入った。当初、食中毒を起こした患者の共通食が「でりしゃす」で販売されたポテトサラダだったため、ポテトサラダが感染源と疑われたが、今のところ感染源も感染経路も特定できてはいない。

 ただ店側に問題がなかったわけではない。六供店では感染した11人のうち、ポテトサラダを食べた人が4人、ポテトサラダではなくコールスローやマリネなどのサラダ類を食べた人が5人、亡くなった3歳の女児と60代の女性はサラダ類を一切食べず、エビの炒め物、タケノコの炒め物、きんぴら、天ぷらの4品の惣菜を食べている。

 前橋市保健所は「他人や器具を介して菌が炒め物などに付着した二次汚染の可能性が高い」という見解を示している。六供店で感染した0157の遺伝子型が他店と同じなので、六供店を訪れた客が持ちこんだのではなく、六供店にすでに存在した食材等から店舗内で二次汚染が発生した可能性が高い。

 六供店では、客が使うトングが複数の惣菜で使い回され、包丁やまな板も食材によって使い分けていなかった。さらに、衛生管理マニュアルもなかったことで、営業再開前に3日間の営業停止処分を受けている。

 営業再開後、女児が死亡したことで六供店は自主休業に追い込まれたが、他店は通常通り営業している。営業再開に踏み切る際、でりしゃすを運営する株式会社フレッシュコーポレーションは、新たに次の4つの安全対策を講じると発表している。

・お取引様加工施設の衛生管理や消毒工程などの確認の厳格化、またお取引先様物流倉庫の温度管理の徹底の強化
・サラダなど温めずにお召し上がりいただく商品は、個食パックでの販売に変更
・全店の厨房の改良工事を行い、サラダ専用の調理スペースを設置
・アルコール消毒液の増設

 さらに同社は、保健所から衛生管理に問題があるという指摘を受け、「新たに1万本のトングを購入、一つのトングで1品だけを取り、使い回しを禁止する注意書きも貼った。惣菜を盛っていた大皿には、二次汚染予防にカバーを取り付けた」(9月15日付朝日新聞)という。

 食中毒の予防対策は、消費者も事業者も「付けない」「増やさない」「やっつける(殺す)」ことだ。店側は、感染源と感染経路がわかっていない状況では、一次汚染を防ぐための「付けない」ことへ新たな対策を講じることができない。しかし、店での二次汚染を防ぐことはできる。それが「個食パックにする」「トングの使い回しをやめる」「カバーを取り付ける」という対策だが、使い回しの注意書きだけでは不十分だろう。惣菜担当者を売場に常駐させて商品説明をしながら、直接客に注意喚起もするといった体制を整える必要がある。しかし、それには人件費がかかる。

垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

1953年岐阜市生まれ。77年慶應義塾大学商学部卒業。食品問題のプロフェッショナル。放射能汚染、中国食品、O157、鳥インフルエンザ問題などの食の安全や、食育、食品表示問題の第一人者として、テレビ、新聞、雑誌、講演などで活躍する。『ビートたけしのTVタックル』『世界一受けたい授業』『クローズアップ現代』など、テレビでもおなじみの食の安全の探求者。新刊『面白いほどよくわかる「食品表示」』(商業界)、『選ぶならこっち!』(WAVE出版)、『買ってはいけない4~7』(金曜日)など著書多数。

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