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垣田達哉「もうダマされない」

O157で女児死亡の惣菜店系列、原因不明のまま営業再開…厳格な対策には多額コスト

文=垣田達哉/消費者問題研究所代表

 さらに「増やさない」ための対策も必須だ。今回の集団食中毒事件の最大の問題点は、店での温度管理が徹底されていたかどうかである。0157が付着したとしても、5℃以下の冷蔵状態で保存・陳列されていれば、増殖は防ぐことができる。それには惣菜の種類によって、保冷できる陳列棚・陳列ケースを使用しなければならない。しかし、それにもコストがかかる。

 食の安全を確保するためには、人件費や設備費などコストがかかる。そうかといって、売価に上乗せすれば売上が落ちるかもしれない。そこをコントロールするのが企業の使命である。
 
 今回の事件で最もやっかいだったことは、加熱後の商品(ポテトサラダや炒め物など)で食中毒が発生したことだ。温めないで食べる惣菜は、食中毒の最大の予防策である「殺す」ことができない。菌が付いても増えても、殺すことができれば食中毒は起きない。それができない惣菜で食中毒が発生することは、消費者にも事業者にも、そして行政にも非常に頭が痛い問題である。

検出される確率は低い

 O157は、潜伏期間が4~8日間と食中毒菌としては比較的長い。そのため、食中毒が発生してから原因食材にたどり着いても、その食材が残っていないことが多い。今回のように、販売されてから2週間も経過した後に工場などの検査や従業員の検便を実施しても、菌が検出される確率は低い。そのため、感染源や感染経路が特定しにくい食中毒である。

 一方、潜伏期間が1~2日間のノロウイルスは、比較的、原因食材や感染経路の特定がしやすい。しかし、発症すると重篤になる確率が高いのは、ノロウイルスよりもO157のほうだ。売上が年々右肩上がりで増えている惣菜で、O157食中毒が発生したことは、消費者はもちろんだが、食品業界(製造から販売まで)にも大きなショックを与えている。

 原因がわからない段階では、製造から運搬、販売まで、何に注意していいのかまったくわからないのだ。惣菜でO157食中毒が再発すると、食品業界はどのように防げばいいのか疑心暗鬼になる。今まで以上の衛生管理にコストをかけなければならないが、それで防ぐことができるのかわからない。衛生管理を徹底するしかないが、「自分の所で起きたら」という不安は付きまとう。

 食中毒の多くは、今まで通りに作業をしていても発生する。当事者がまったく気づかないで起きる。何か変化に気づけば、当然現場ではなんらかの対処をする。目に見えないだけに、手洗いや殺菌などをどこまで徹底すればいいのか判断しにくい。自分ではキチンとしていたつもりでも、食中毒を発生させれば責任は問われる。意図的でなくても、大きな被害を出せば、消費者はもちろん企業も大きなダメージを受ける(潜伏期間は日本医師会ホームページ参照)。

HACCP導入には多額コスト

 では、国はどうするのか。答えはすでに出ている。

垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

1953年岐阜市生まれ。77年慶應義塾大学商学部卒業。食品問題のプロフェッショナル。放射能汚染、中国食品、O157、鳥インフルエンザ問題などの食の安全や、食育、食品表示問題の第一人者として、テレビ、新聞、雑誌、講演などで活躍する。『ビートたけしのTVタックル』『世界一受けたい授業』『クローズアップ現代』など、テレビでもおなじみの食の安全の探求者。新刊『面白いほどよくわかる「食品表示」』(商業界)、『選ぶならこっち!』(WAVE出版)、『買ってはいけない4~7』(金曜日)など著書多数。

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