わずか1カ月後に適格性容認へ傾く茶番劇
東電側が8月25日に提出した文書には「廃炉をやり遂げる」などと決意が書かれていたが、廃炉作業に関して具体的な「覚悟」と「実績」は見当たらずじまい。やる気だけで押し通す東電に田中委員長の怒りの鉄槌が下されるかと思いきや、8月30日に開かれた2回目の意見聴取では田中委員長を筆頭に規制委側は理解を示し、「適格性」容認に突き進んだ。
もちろん、委員のなかからは反対意見はあった。例えば9月6日の会合では「(東電の文書は)決意表明。それだけで適格性ありとしていいのか、不安を感じる」などの声もあったが、田中委員長は「適格性を否定する状況ではない」と語った。
東電に対する姿勢を豹変させたのは、田中委員長の任期の可能性が高い。9月22日に5年の任期が切れるため、「何かしらの結論を出したかったんだろう」との見方が支配的で、本人も否定しない。駆け込み的なゴーサインに対し、反原発派を中心に失望をあらわす関係者もいるが、「これは実は脚本通り」(前出の記者)との指摘が大半を占める。
安倍政権は規制委の厳格な審査をもって原発再稼働への理解を得たいため、規制委は電力会社に一見厳しく接しながら、最後は軟化する姿勢を取り、政権から高い評価を得ていた。政権内には一時、田中委員長の再任を求める動きも出ていたが、本人は高齢を理由に固辞した。
田中委員長の任期切れが東電の救い?
もちろん、東電に「口先だけ」でない「覚悟」があり、「適格性」を満たしていれば問題ないが、8月30日の委員会ではいまだに変わらぬ東電の姿を見せつける格好となった。小早川社長が委員の質問に、片肘をついて体を斜めにして質問に答える様子がインターネットで中継され、ニコニコ動画では「態度が悪い」と批判のコメントが殺到。委員からも「端的に言って、やはり謙虚ではない。(略)特に現場から離れている、現場を見ていない人たちのなかで、やはりその尊大さは企業の風土として残っているような気がします」と苦言を呈された。
実際、東電は10月4日に審査書案が了承される前に、一部マスコミ向けに柏崎刈羽原発の視察会を10月中旬に開催すると案内済み。安全対策などを公開する予定というが、地元の反対は根強い状況下においても再稼働に向けて突っ走る姿勢は、やはり尊大極まりないと受け止められて当然といえるだろう。結局、東電は何も変わってはいないということだ。
(文=編集部)