銀行のカードローン貸出残高が2017年3月末時点で5兆4377億円となり、最近5年間で1.6倍に急伸している。銀行のカードローンは無担保で使い道が自由であるため、「多重債務の温床」と風当たりが強まり、金融庁は対応を強化せざるを得なくなった。9月20日、金融庁は三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行の3メガバンクに立ち入り検査を行った。
実際、銀行のカードローン残高急増と比例するように、16年の自己破産申請件数は6万4637件と13年ぶりに増えた。自己破産は03年の24.2万件をピークに減り続けていた。自己破産が減ったのは、消費者金融への規制強化の効果が出たからだ。多重債務問題を受け改正貸金業法が06年に成立し、10年に完全施行された。利息制限法の上限(20%)を超えるグレーゾーン金利が撤廃され、年収の3分の1超の貸し出しは原則禁止となった。その結果、貸金業者の貸出残高は05年度末の17兆円超から、10年で4兆円台(15年度末)にまで減った。それでも昨年自己破産が増加した理由として、日本弁護士連合会などは、銀行カードローンの過剰融資を指摘する。
「サラ金地獄」から「銀行ローン地獄」に変わる
「多重債務の温床」という批判に対して、全国銀行協会(全銀協)は3月、厳格な審査など過剰な貸し付けに対する抑制策を発表。それでもカードローンの貸出残高は増え続けたため、全銀協は加盟行のカードローンの融資残高を集計して毎月公表していく方針を打ち出した。
10月から、都市銀行、地方銀行、第二地方銀行といった区分ごとの発表を始めた。しかし、各行ごとのカードローン残高を公表するわけではなく、あくまで業態ごとの合計にすぎない。
では、銀行はどの程度のカードローン残高を抱えているのか。クレジットカードや消費者金融クレジットカード専門誌「月刊消費者信用」(17年7月号)が17年3月末の銀行のカードローン残高を掲載している。
それによると、三井住友銀行6499億円、三菱東京UFJ銀行4352億円、楽天銀行3861億円、新生銀行2482億円など。みずほ銀行は未公表で、地銀・第二地銀も非開示だ。なお、14年3月末と比べて三井住友は1716億円、三菱東京UFJは1878億円増加した。楽天銀は1314億円増、新生銀は1294億円増だった。
「問題なのは、銀行が貸金業法の規制対象外で、いくらでも利用者に貸し出せるということ。銀行のカードローンと消費者金融の貸付残高は12年3月末に逆転した。その後は銀行カードローンが急増し、消費者金融を引き離す。17年3月末にはとうとう2倍強にまで広がった。このままだと、かつて『サラ金地獄』と呼ばれた多重債務問題が、今度は『銀行ローン地獄』にとって代わられる」(金融業界関係者)