銀行が稼げない
銀行は企業向け融資の貸出利ザヤが確保できず、国債による資金運用もままならならい。マイナス金利だから、必要以上に日本銀行に預けておくわけにもいかない。銀行は個人向けローン事業で利益を出すしか道がなくなってしまった。
「日銀の思惑は、日銀に預けるお金を増やすとマイナス金利というペナルティが与えられるから、銀行は企業への融資や海外投資に資金を振り分けるだろうというものだった。企業に資金が回れば、設備投資が増えて経済は拡大すると考えたのだ。しかし、実際にはそうはならなかった。デフレから脱却していない今はまだ、企業に設備投資のニーズがない。資金需要がないから、銀行は融資を増やそうにも増やせないのだ。企業が設備投資をしないのは、消費が増えないからであり、最大の理由は庶民の実収入が2.9%も落ちているからだ」(前出と別の金融業界関係者)
アベノミクスの前提は、金融緩和で円安を進めれば、輸出産業を中心とした勝ち組企業が潤い、それが中小企業や一般国民にも滴り落ちて、景気が拡大していくという「トリクルダウン」理論だった。しかし、それが間違いだったことは論をまたない。
反社勢力対策で銀行カードローンは規模縮小も
銀行カードローンは消費者金融業者への“丸投げ”を指摘されている。銀行は利用者が支払う金利の一部を傘下の消費者金融や提携先に回す代わりに、消費者金融が債務を保証している。返済が滞った場合は消費者金融が取り立てる。銀行はリスクを回避できるため、返済能力などを十分に審査しない。銀行にとってカードローンは、ノーリスクで利ザヤが抜ける美味しいビジネスなのである。心あるバンカーからはこんな指摘もある。
「銀行カードローンは『即日審査・即日融資』をセールスポイントにして残高を増やしてきた。暴力団関係者にとって使い勝手の良い現金自動支払機になっている例もある。銀行は預金保険機構経由で警察庁のデータベースに照合するシステムを導入している。しかし、住宅ローンなどの新規の個人向け融資には適用されるが、銀行カードローンは対象外。この抜け道を暴力団関係者は見逃さなかった」
金融庁の視線が厳しさを増していることもあって、各行は18年1月から、融資の際に暴力団関係者かどうかを警察庁に確認することになった。
「警察庁のデータベースに確認する作業には最低でも1営業日が必要になる。銀行カードローンの武器だった迅速性が失われることになるかもしれない。銀行はカードローンで10%前後の金利収入を得ていたが、このドル箱から借り手が逃げていくかもしれない」(同)
反社会的勢力対策をおろそかにしてきた銀行カードローンは、審査の強化で失速するのか。失速すれば銀行の収益の悪化は避けられない。
(文=編集部)