東芝は10月24日、千葉県の幕張メッセで臨時株主総会を開いた。
東芝が株主総会を開くのは、今年に入って3度目。3月の臨時株主総会は、半導体メモリ事業の分社化の承認を得るため。6月の定時株主総会では監査法人との意見対立から2017年3月期の決算発表ができなかった。
臨時株主総会の決議事項は3つ。第1号議案は「2017年3月期決算の承認の件」、第2号議案は「取締役10名選任の件」、第3号議案は「子会社株式譲渡契約承認の件」だった。東芝は27日付けで臨時報告書を提出し、議案の賛否を公表した。
注目の半導体メモリ事業子会社、東芝メモリの売却の賛成比率は98.89%。ほぼ満場一致で可決した。メモリ事業の売却承認案は、協業先の米ウエスタンデジタル(WD)が株主に反対票を投じるよう働きかけたとされる。
決算承認案の賛成比率は87.97%で、巨額損失に対する株主の不信感が強く出た数字だ。決算は通常、報告事項だが、PwCあらた監査法人が「限定付き適正」の意見をつけたため、過半数の賛成による承認が必要になった。米国の議決権行使助言会社が決算案に「反対」を推奨したこともあって、金融機関など法人株主の一部が反対した結果、87%台の賛成にとどまった。決算案の賛成比率が9割を下回るのは“ニュース”といえる。
加えて、6月の株主総会で暫定としていた取締役の選任案を改めて提出した。取締役10人の選任案のうち、5人の賛成比率が90%を下回った。
6月の定時株主総会では、綱川智社長と財務担当の平田政善専務の2人が賛成比率90%を割っていた。臨時株主総会では、これが5人に増えた。綱川氏の賛成率は6月の89.00%から86.26%へと、さらに下がった。平田政善専務も89.06%から86.27%に低下した。社外取締役6名のうち、公認会計士出身の2人と弁護士1人が90%割れ。逆に、池田弘一・アサヒグループホールディングス相談役、小林喜光・三菱ケミカルホールディングス会長、前田新造・資生堂相談役の3名の経営者の賛成率は上がった。
取締役選任の議案については、議決権行使助言会社の米グラスルイスが、一連の不正会計などにより東芝の内部統制の実効性に深刻な疑いが生じるとして、綱川氏ら全取締役の再任に反対するべきだと助言していた。
一方、米インスティテューショナル・シェアホルダー・サービス(ISS)は、「綱川社長を今の状況下で選任しないことは株主の利益にならない」として取締役全員の再任に賛成すべきだと助言していた。
【臨時株主総会での取締役の賛成比率】
※カッコ内は6月の定時株主総会での賛成比率
・社内取締役
綱川智(社長)…86.26%(89.00%)
秋葉慎一郎(副社長)…96.01%(-)
平田政善(専務)…86.27%(89.06%)
櫻井直哉(上席常務)…96.36%(-)
・社外取締役
野田晃子(公認会計士)…87.04%(90.56%)
池田弘一(アサヒグループHD相談役)…93.48%(90.61%)
古田佑紀(弁護士)…87.05%(90.58%)
小林喜光(三菱ケミカルHD会長)…93.50%(90.44%)
佐藤良二(公認会計士)…87.06%(90.47%)
前田新造(資生堂相談役)…93.51%(90.60%)
(注:秋葉慎一郎氏と櫻井直哉氏は新任)
(文=編集部)