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相次ぐ企業の不正は、日本経済にとってチャンスである

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授
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 なぜなら、そこには不確実性がある。将来、どのようなモノやサービスがヒットするかは、誰にもわからない。このリスクを避けようとする心理(経営者などの気持ち)が強くなると、企業の行動は従来の取り組みの繰り返しに向かう可能性がある。

 ただ、過去のケースを振り返ると、従来にはなかった便利さや快適さを提供できるモノが需要を獲得し、成長をもたらした。ここが重要だ。多くの人が潜在的に抱える問題を解決する手段を提供できれば、需要を生み出すことは可能である。

 アップルのiPhoneはその典型例だ。トヨタ自動車が生み出したハイブリッド技術も然りである。プロダクト・イノベーション(新しいモノの創造)は、従来の生産プロセスに変革をもたらす。具体的には、品質管理手法の改善や、新しい生産管理の方法が考案されるだろう。

 それに加えて、新しい製品に必要な部材などの供給源の確保、生産や調達、戦略の策定と執行を司る組織、その販売手法(マーケティング)の分野でも、新しい取り組みが進むだろう。

 供給サイド(企業)のイノベーションの発揮が、ヒット商品の創造につながる。ヒット商品が生み出されれば、雇用機会も増える。過去の延長線上で、今日も明日も、一年後も、基本的には同じ発想に基づいた経営を続けていると、その企業は需要を取り込めなくなり、最終的には市場原理によって淘汰される可能性がある。ヒット商品の創造を進めることが、競争原理の発揮にもつながるのである。

イノベーションのチャンスに恵まれた日本経済

 ある企業経営者とディスカッションを行った際、彼は「既存の事業だけでなく、新しい事業プロジェクトが欠かせない」と話していた。足許のわが国の経済環境を見渡すと、この2つのポイントは満たされている。景気は緩やかな回復を維持している。わが国の景気回復を支えた海外経済も、比較的安定している。加えて、物流業界や介護をはじめ、多くの分野で人手不足が深刻化している。つまり、潜在的なニーズがある。この問題を解決できる技術を開発することが企業の成長と、需要の創造につながるだろう。

 わが国には、イノベーションを進めるチャンスがある。それをうまく生かすことが経営者の役割だ。ヒット商品の開発を目指し、従来にはない新しい取り組み=イノベーションを重視する企業が増えれば、産業界全体にも競争への意識が芽生えるだろう。また、新しい取り組みが増えるなかで、新規参入や起業が増加する可能性もある。それは、社会の新陳代謝の向上と呼ぶべき展開だ。

 データの改ざんなどに関して、ただ単にそれを批判するだけでは新しい発想は生まれづらい。不正などが発生する余地が一掃されるべきであることに、異論の余地もない。その上で、人々の自由な発想や創造性を生かして、より多くの付加価値を創造することが目指されるべきである。産業界や大学をはじめとする教育機関と議論を重ね、その結論を政策として実行していくことが、安倍政権が重視する生産性革命と人材開発には不可欠だ。
(文=真壁昭夫/法政大学大学院教授)

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