大学入学共通テストはこんな問題に?
前回は、教育改革の概要をお話しました。その目玉となっているのが「センター試験の廃止」とそれに代わる「大学入学共通テスト」の導入です。前回、まず川上の大学入試を変えることで、川下の高校の教育を変えていこうという狙いがあると書きましたが、どのように変わるのでしょうか?
その方向性を示すものとして、ちょうど2020年度から導入される大学入学共通テストの第1回試行調査が11月に実施されたので、その内容を見ていきましょう。今回の調査には、全国の高校・中等教育学校の約38%にあたる1889校、延べ18万人の高校2年生・3年生が参加しました。
大学入学共通テストでは、従来のマークシート方式に加えて、記述式問題が課される予定で、国語では生徒会部活動規約や生徒同士の議論を題材に会話内容を推察して書く記述問題などが出題されましたが、マークシート方式の問題にも変化がありました。
従来のセンター試験では、教科書の内容を理解しているかを問う問題が課されてきたのに対して、今回の試験では学んだことを日常生活の中で生かすために、教科書で扱われていない多くの初見の資料を読み込みながら、それらを組み合わせて思考して表現する力までが問われたのです。
例えば、数学1・数学Aでは、高校の文化祭でTシャツを販売する設定で、生徒のアンケート結果や業者の選定などの条件を手がかりに、価格をいくらに設定すれば最大の利益が得られるかを考えるという設問がありました。文脈の中から必要な情報を取り出す読解力や思考力が求められている、数学らしくない問題ですが、この狙いを大学入試センターは「身近な生活の課題解決に数学が活用できるということを実感させたい」と言います。確かに単に公式や解法のパターンを覚えているだけでは解けない問題で、数学の必要性が感じられる問題ですが、正答率はわずか6.8%でした。
大学入試が変われば、高校の授業が変わる
高校の現場からは、「こんな問題には従来の授業では対応できない。早急に変えていかないと」という声が聞こえてきますが、これこそが、今回の教育改革の狙いです。これまでの学習指導要領でも、探究的な学びや生きる力の育成が謳われながら浸透しなかったのは、大学入試がそれらを測るものになっていなかったからです。