というのも、筆者と当サイト編集部は、福岡在住の原告の代理人である法律事務所より、「同記事においては、その内容が正確な取材に基づいているとは言い難く、読者の誤解を招くような表現が多用されております」「直ちに前記記事の配信停止と謝罪広告の掲載を求めます」という配達証明郵便を受け取っているからだ。
送付された日付は4月26日。つまり、彼らは記事掲載翌日に行動を起こしたわけである。いちネット記事(編集部には恐縮だが、それほど有名なサイトでも著名な筆者なわけでもない)に対して、あまりに過剰な反応ではないか?
筆者は、違和感をぬぐい去ることができなかった。「正確な取材に基づいているとは言い難く」と書いてあるが、記事は公式な裁判記録をベースに独自取材を加えてまとめたものである。関係者の多くは、日本郵便の社員や元社員だ。訴訟を起こした以上、記事になるのは当然のことだろう(ぜひ、問題の記事をご参照いただいた上で、ここから先はお読みいただきたい)。名誉毀損などとはとうてい言い難く、むしろ名誉を毀損されたのは筆者自身である。
そこで、この法律事務所に原告側の意見を聞きたいと取材を申し入れるとともに、再度裁判記録を読み込むため、東京地方裁判所を訪れた。
そこで筆者は、思いもよらぬペーパーを発見することになる。原告で福岡県北九州市在住の「K氏」から5月10日付で「取下書」が提出されているではないか。「原告は株式会社Sに対する訴え全部を取り下げる」と書かれている。さらに、原告側の主張を根底から崩す調査嘱託書についての回答書が、リンベル株式会社(東京・日本橋)から裁判所に提出されていたのだ。
リンベル社の回答書の内容に触れる前に、まず郵便局がお客様サービスの一貫として展開するノベルティーグッズを取り巻く商流について説明しておかなくてはいけない。でなければ、原告が「取下書」を提出した理由も理解できないと思うからだ。
●複雑な契約の流れ
原告K氏の主張していた2012年版ノベルティーグッズの契約の流れは、次のようなものだった。
(1)ノベルティーサービスを取り仕切っている郵便局物販サービスカタログ事業部の担当課が、事業者をリンベル社に選定
(2)リンベル社から株式会社B(兵庫県神戸市)に、企画書を含むノベルティーグッズの提案を依頼
(3)B社からK氏に企画提案依頼。被告のS社に製造費用の見積もり依頼
(4)K氏の従姉妹で丸尾郵便局主任のH氏が顧客にヒアリング調査
(5)H氏の姉(K氏の従姉妹)の知人がハローキティの貯金箱と3点セット(通帳カバーなど)のデザインラフと企画書を作成し、それをK氏はB社に提出
(6)B社がA社(ハローキティなどのキャラクターグッズはサンリオがA社に許諾し、ライセンス販売している)の許諾を受けてリンベル社に提案し、採用された
(7)最終デザインはD社(東京・南青山)が手がけた
(8)S社が加工会社などに発注、納品
上記の流れを受けて、
・企画案の提案はB社とK氏が一緒に行った
・「平成24年頒布会ハローノベルティーグッズ(貯金箱と3点セット)」の企画料として、S社からK氏に、上代の5%程度を支払うことで合意