・ 支払日は各々の納品において、デザインを手がけたD社から加工を担当したS社に入金のあった日か翌日に、K氏の指定口座に振り込まれることになっていた
・ S社が突然K氏への支払いを拒否し、未払金の総額が875万円となった
一方、被告であるS社は「答弁書」で次のように反論していた。
・元日本郵便社員・U氏の指示で、B社の指示に従うように強制
・原告のK氏とは電話、メールのやりとりも含め面識がない
・ノベルティーグッズの企画案はすべてD社によって作成された。よって、本件にB社もK氏も関与していない。
・B社から、製品1個あたり5円の企画料をK氏の口座に振り込むよう指示を受けた。
・支払いについては口外するなとB社から指示を受けた
●原告と被告で対立する主張
つまり、言い分は真っ向から対立していたのである。ちなみに、すでに日本郵便を退職しているU氏について「本当に辞職したのか、辞職したのなら時期と理由について教えてほしい」と日本郵便に問い合わせるも、「進行中の案件のため、回答は保留させてほしい」との返答だった。
そこに出て来たのが、リンベル社からの回答書である。回答書にはこう書かれていた。
・B社に対し、提案書の作成に関する提案依頼の発注は行っていない
・B社に対し、「郵便局のノベルティーグッズ」に関する提案の依頼を行った事実は存在しない
B社に対して依頼自体がなかったのであれば、B社から企画案を依頼されたというK氏の主張はほとんどすべてが虚偽ということになる。日本郵便の社員が私益を諮り、なんの関係もない第三者を介在させたという被告側の主張も俄然信憑性を帯びてくる。筆者は、あいた口が塞がらなかった。
K氏が「取下書」を出さざるを得なくなったのももっともだ。しかし、被告側の答弁書が出た時点で、訴えの取り下げは、被告の同意なしには行えない。
5月22日、日本郵便の親会社である日本郵政は、新経営陣を発表した。財務省出身の坂篤郎社長が退任し、後任には元東芝会長の西室泰三・郵政民営化委員会委員長が就任する。その他、取締役18人のうち17人の退任も決定。
菅義偉官房長官は、
「民営化を円滑に進めていくために民間の経営手法の一層の導入が必要だ」
と強調しているが、今起きている裁判は、こうした流れに逆行するような内容だ。いまだ日本郵政の株式は国が100%持つ。株主は我々国民だ。株主のひとりとして、目が離せない裁判であることは間違いないだろう。
ちなみに日本郵便を所管する総務省関係者によれば、「先月、記事が省内に出回り、騒ぎになった。早速、省内に調査会を立ち上げたはずです」とのことだが、同省担当課に問い合わせたところ、「現在、公判中ということもあり、事態の推移を見守っている段階です」とのことだった。
(文=横田由美子/ジャーナリスト)