黒田電気では旧村上ファンド側が完勝
オフィスサポートの池田龍哉社長は旧村上ファンドの総務部長。一方、レノの福島啓修社長は、村上世彰氏の側近で旧村上ファンドの企画課長だった三浦恵美氏の後任として同職に就いた。レノは存在感を増し「村上ファンドの復活」と話題を呼んだ。
17年6月29日に開催された電子部品商社、黒田電気の株主総会で、レノが提出した社外取締役を選任する議案が賛成多数で可決されている。モノ言う株主による株主提案が可決されたとしてニュースにも取り上げられた。
黒田電気はレノの提案に反対していたが、共同保有分を含めて発行済み株式の37%を握るレノに加え、他の少数株主も賛同した。危機感を持った黒田電気側は先手を打った。
黒田電気は17年12月16日、アジア系ファンドのMBKパートナーズによるTOBが成立したと発表した。発行済み株式の68%にあたる2570万株の応募があり、買い付け予定株数の下限(1891万株)を上回った。黒田電気は、臨時株主総会を経て上場廃止になる。
MBKはレノと交渉してTOBの賛同を得た。TOB価格は1株当たり2720円。MBKは黒田電気株の過去6カ月間の平均株価に約30%のプレミアムを付けた。高値で売り抜けたレノの完勝との見方もできる。
東栄リーファ側のTOB価格が低すぎたのが敗因
では、オフィスサポートおよびレノの旧村上ファンド勢は、何を狙って東栄リーファのTOBに参戦してきたのか。オーシャンが提示したTOB価格があまりにも低かったことが原因だ。東栄リーファの17年9月末時点の1株あたり純資産は885円。ところがTOB価格は600円で純資産額を3割強下回る。TOBに応じるよりも会社を解散したほうが株主には有利になる。
旧村上ファンド勢は株式を買い占めて揺さぶりをかけ、TOB価格を引き上げさせ、高値で売り抜けを狙ったということだ。TOB価格の引き上げ期待から、東栄リーファの株価は、18年1月10日には826円の昨年来高値をつけた。期待に反してオーシャンはTOB価格を引き上げなかった。
その結果、MBOは不発に終わり、株式を非公開とする計画が崩れた。そのため、MBOの成立を前提にゼロとしていた18年3月期の配当予想を12円に修正した。
TOB価格の引き上げに失敗した旧村上ファンド勢はどうするのだろうか。買い占めた株式をどうやって高値で売り抜けるかが焦点となる。株主への利益還元を強く求め、自社株買いを迫るのが常套手段だが、東栄リーファの利益剰余金は30億円強(17年9月期末)しかなく、財務内容も良くない。今年の株主総会に向けて“第2ラウンド“の展開を予想するのは困難だ。
(文=編集部)
【続報】
東栄リーファーラインは2月7日、MBOを再び実施すると発表した。株式の買い付け価格を前回から200円引き上げ800円とした。前回、MBOが不成立となった後、村上世彰氏と話し合った結果、MBOに賛同を得たという。村上氏は東栄リーファーの第1位の株主であるオフィスサポート(レノとの共同で保有)と第2位の株主のレノの親会社の大株主という立場だ。旧村上ファンド勢はMBO株価の引き上げを狙って、株式を買い増し、経営陣の揺さぶりをかけた末に勝利したことになる。東栄リーファーの河合弘文社長らが出資するオーシャンが、議決権の3分の2以上にあたる368万株を下限に、TOB(株式公開買い付け)で株式を取得する。買い付け期間は3月23日まで。MBO成立後、東栄リーファーは上場廃止となる。