仏ルノーの会長兼CEO(最高経営責任者)で日産自動車と三菱自動車工業の会長であるカルロス・ゴーン氏の周辺がキナ臭くなってきた。
欧米メディアによるとゴーン氏は1月17日、仏国民議会の公聴会に出席し、「ルノーのCEOを退く可能性」を示唆した。ルノーのCEOは、13年務めた。ゴーン氏に権限が集中する現在のガバナンス(企業統治)について、「やむを得ず、この体制にしている。持続できるとは思えない」と明言。ルノー、日産、三菱自の企業連合体の「経営責任を分けるよう変革を進める」とした。
ゴーン氏の去就は、ルノーの大株主(15%出資)であるエマニュエル・マクロン仏大統領が握っているといっても過言ではない。
「マクロン大統領は経済産業デジタル相時代に、仏政府としてルノー株式を買い増し、ゴーン流の経営に異を唱えた。ゴーン氏の高額役員報酬批判の急先鋒だった」(大手紙の現地特派員)
ルノーがヘッドハンティング会社経由で後継者の選定を始めたとの報道もあったが、フランス地元紙など一部の欧州メディアは、ゴーン氏が続投する可能性が高まったと報じた。ゴーン氏のルノー取締役の任期は6月15日までだ。交代か、続投か、株主総会までに結論を出し、後任が必要であれば、それまでに候補者を決めなければならない。
後継候補者としては、ルノーで“ものづくり”を統括するチーフ・コンペティティブ・オフィサー(CCO)のティエリー・ボロレ氏や、上級副社長で営業・マーケティング担当のティエリー・コスカス氏、チーフ・パフォーマンス・オフィサー(CPO)のシュテファン・ミュラー氏の名前が挙がっている。
また外部の人材では、欧州エアバスのファブリス・ブレジエ最高執行責任者(COO)や、仏グループPSAのカルロス・タバレスCEOの名前も挙がっている。タバレス氏はルノーの元副社長で、ゴーン氏に「トップの座を譲るよう」直談判して逆に切られた人物だ。PSAの経営立て直しで手腕を発揮しており、欧米の自動車業界では「ルノーの現在の副社長クラスより経営者としては上」と高く評価されている。
トヨタ自動車のディディエ・ルロワ取締役副社長も候補に挙がっている。同氏がルノーのトップになれば、まさにビッグニュースだ。