競合他社も高品質のすしを投入
高単価・高品質のすしを投入したにもかかわらず、なぜかっぱ寿司の客足は戻らないのだろうか。前述したとおり、食べ放題などの影に隠れてしまったことがひとつの要因と考えられるが、それに加え、競合店も高単価・高品質のすしを投入しているため、かっぱ寿司の高単価・高品質のすしがニュース性の乏しいものとなってしまったことが大きく影響したと筆者は考えている。
その筆頭格が、業界トップのスシローだろう。たとえば、スシローは17年11月に、CSN地方創生ネットワークが運営する飲食店向けオンラインマーケット「羽田市場」を活用し、日本各地の海でとれる旬の天然ものを提供するプロジェクトを開始した。CSNは羽田空港内で仕分けや加工を行うセンターを自社で運営し、そこを通して産地から店舗へ一気に魚介類を配送している。市場などの中間業者を介さないため、原則、とれたその日のうちに店舗に届くという。スシローはこの仕組み利用して、高単価・高品質のすしを提供し始めたのだ。
羽田市場は、その斬新な仕組みが評価され各種メディアでよく取り上げられた。人気情報番組『カンブリア宮殿』(テレビ東京系)にも取り上げられた。その羽田市場とスシローが組んだことも話題になり、よく報じられた。
スシローはそれ以前から、高単価・高品質のすしの販売に力を入れている。世界中のよりすぐりのネタを集めて1皿100円で提供するプロジェクトがそのひとつだ。16年8月から始まり、チリ産のウニを使った「濃厚うに包み」を販売したのを皮切りに、その後もネタを変えながら断続的に高単価・高品質のすしを販売し続けている。
スシローは一例にすぎない。他の回転ずしチェーンも、高単価・高品質のすしの提供に力を入れている。また、近年は1皿数百円という高級路線の回転ずし店も勢いがある。回転ずし店で提供されるすしは、高品質でも当たり前という認識が広がりつつあるのだ。
そうした風潮のなかで、かっぱ寿司の高単価・高品質のすしがニュース性に欠けてしまった感は否めない。だが、「かっぱ寿司が変わった」と広く認識されるためには、低価格でおいしいすしを提供するだけでなく、高単価・高品質のすしも同時並行的に地道に提供し続けることも必要不可欠で、方向性は間違いではないはずだ。かっぱ寿司が復活するには、もう少し時間が必要なのかもしれない。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)
●佐藤昌司 店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。