元国税局職員、さんきゅう倉田です。宇宙から地球を見て最初に言うセリフは「地球も申告も青かった」です。
確定申告の内容にミスがある、あるいは意図的に所得を減らすような不正があると「加算税」という、罰金のような処分が課せられます。加算税には種類があり、単純なミスであれば「過少申告加算税」、不正行為の場合はより罰金が多い「重加算税」になります。税務調査によってどちらが課せられるかは、納税者からしても、調査官からしても、とてつもなく重要な問題です。今回は、調査によって課せられた重加算税が、後に取り消された事例を紹介します。
ある街で、電気工事業を営む個人事業者のAさんは、所得税の確定申告を毎年行っていましたが、消費税の確定申告は行っていませんでした。消費税の確定申告は、年間売上が1000万円を超えると必要になります。
所得税の確定申告書の提出があれば、売上が1000万円を超えているか否かは一目瞭然なので、消費税の確定申告が無申告であることは簡単に発覚してしまいます。これをきっかけに、Aさんに税務調査が行われることとなりました。
調査中、Aさんの経費の領収書の裏に、こんなメモが見つかりました。
「○○○円で確定申告すると▲▲▲円の納税になる」
これを見つけた調査官は、Aさんに質問をしました。Aさんの回答は以下の通りです。
「FXで大きな損失を出しました。借入金の返済のため、売上を過少に申告し、必要経費も大体の金額で適当に申告していました」
「税金が▲▲▲円にならないように考えて、その後、所得を決めて、売上から一部を除外し、仕入と経費を水増ししました」
「領収証の裏の▲▲▲円のメモは、納税額を少なく申告する際に試算したメモ書で、このような不正な計算は5年ほど前から行っていました」
このように、不正があることは明確です。Aさんは、仮装・隠ぺいとおぼしき行動もしていました。列挙すると、以下のような行動です。
・取引先からの日々の売上を記載したメモ書を廃棄していた
・納税額を過少申告する際に試算したメモ書を廃棄していた
・預金口座を確認すれば容易に確認することができたにもかかわらず、収支内訳書に根拠のない収入と経費の額を記載していた