経営再建中の東芝が、社外から新しいCEO(最高経営責任者)を招聘し、経営再建を目指すことになった。4月1日付で元三井住友銀行副頭取の車谷暢昭氏が、代表執行役会長兼CEOに就任することが発表された。今回のトップ人事のポイントは、東芝が“社外の目”を内部に取り込み、ガバナンスなどの強化を進めることにある。その上で、車谷氏の経験や人脈を生かして、今後の事業の再生を進めることが重視されている。主力行である三井住友銀行との関係を強化することなども目指されているはずだ。
銀行の出身者が製造業で活躍できるか否かについては、賛否両論、さまざまな見方がある。モノづくりの発想と、金融の発想は違うからだ。金融ビジネスで重要なことは、低いコストで資金を調達し、それをどれだけ期待収益率が高い分野に投じるかという発想だ。
製造業でも成長期待の高い分野に資金を振り向けることは重要だが、それは基礎的な技術力があったうえでの話である。どのような技術、あるいはコンセプトが将来的に成長をけん引する事業になるかを見極めることは容易ではない。上場廃止を回避するために、稼ぎ頭の半導体事業の売却を決定した東芝が、将来の成長の源泉を見いだし、育むことができるかは依然不透明だ。
銀行出身者をトップに迎えた東芝の真意
今回、東芝が新しいCEOに三井住友銀行出身である車谷氏を迎えた最大の理由は、外部の視点から同社の経営体制を見直し、ガバナンスを再構築することにある。見方を変えれば、東芝内部からの人選では今後の経営改革を進めることが難しいと判断されたわけだ。
不適切会計問題、米ウエスチングハウスの買収問題に共通するのは、当時の経営陣の独断で、会計操作やリスクの高い買収案件が決定されたということだ。組織的に問題やリスクを検証し、一部の意見が押し通されることを阻止する仕組みが東芝には備わっていなかった。
東芝のコーポレート・ガバナンス(企業統治)が機能しなかったといわれるゆえんがここにある。コーポレート・ガバナンスの機能は、企業がゴーイングコンサーン(永続的事業体として持続的に利益を創出し、社会の構成員として存続し続けること)であるために、過度なリスクテイクや、経営者の偏った発想を是正することにある。また、経営戦略が理に適ったものか、その執行に疑義はないか、経営の執行とその結果を客観的にモニタリングし、必要な場合には是正を求めることもガバナンスの機能だ。