それが、次の図にある3つの柱です。
文部科学省は、「個別の知識の定着を図るとともに、社会における様々な場面で活用できる知識として身に付けていくことが重要」としていますが、今回の改訂で注目されるのは、新しい時代に必要な資質と能力の育成のために、学校教育のなかで何を行い、それをどのように評価しようとしているかということです。
これまでの学校教育では、図3左下の「何を理解しているか何ができるか(知識・技能)」 の評価が大きなウエイトを占めていましたが、今回は、「知識や技能を習得する」だけではなく、 それをもとに「理解していること・できることをどう使うか(思考力・判断力・表現力)」、「どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか(学びに向かう力・人間性等)」までを含めて、教育の成果と定めています。以前このコーナーで紹介した21世紀型能力もこうした考え方に沿ってつくられています。
「主体的・対話的で深い学び」で授業が変わる
そして、そうした資質や能力を育てるための指導方法として今回提示されているのが、「主体的・対話的で深い学び」(図2参照)です。
ずいぶん回りくどい表現ですが、教員による一方通行の授業から、 生徒自身が主体的・能動的に参加する授業や学習のことです。アクティブラーニングという表現のほうがわかりやすいかもしれませんが、「教えなくていいのか」という誤解も生まれるし、深い学びに到達することが大切ということで、この表現になりました。
最初に紹介した、学習指導要領のねらいの冒頭にあるように、いまだかつてなかったような急速かつ激しい変化が進行する社会を、一人ひとりの人間が主体的・創造的に生き抜いていくためには、「主体的・対話的で深い学び」を定着させていくことが欠かせません。そのためには、ゆとり教育の総合学習が失敗だったといわれたときのように、21世紀型スキルを画一的に学ぶ方向ではなく、学校を社会に開いてともに学ぶ教育が実現することが欠かせません。
そういう意味で、2020年度は、日本の教育が本当に変われるのか、あるいは掛け声だけで終わるのか、その重要な分岐点になるといえるでしょう。
(文=中曽根陽子/教育ジャーナリスト)
・文中図1.2.3はすべて文部科学省 「新しい学習指導要領の考え方」より抜粋
※1 オックスフォード大学 マイケルA. オズボーン准教授およびカール・ベネディクト・フレイ博士と野村総研との共同研究による試算による