優秀な学生ほど、大学時代はマルチに活動しています。勉強だけでなく複数のNPO活動やグローバルな活動、多様な人と出会える場は、彼らにとっては経験の幅を広げる貴重な場所。「会社に入ると仕事ばかりではヒマなので」と新たにプログラミングの学校に行き始める人もいます。
こういった人材を会社の中だけに閉じ込めておいてよいものか? そんな疑問は経営者の側からも出てきています。たとえば、副業解禁を早くから標榜しているロート製薬の山田会長に先日、インタビューしたところ「人材を会社だけに囲い込むことへの違和感をずっと持っていた」と答えています。
ミレニアル世代をひきつける会社
働き方改革は、まず「昭和の長時間労働DNA、働き方のアンインストールから」と私はいつも言っています。昭和レガシー企業なら、「働き方改革で先行している企業」の人気が高い。19時前退社を遵守する企業、完全テレワークを実現している企業、副業解禁などがすでにできている企業などが選ばれます。
金融業界に衝撃が走った「AIG損保の転勤廃止」は、損害保険業界のなかでは目立って魅力的な条件かもしれません。今は「エリア総合職」と「総合職」で差別をつけるやり方が一般的ですが、実は「エリア総合職」は女性だけという場合も多い、みせかけの制度でもあります。働き方改革の一環で全社員を対象に転居を伴う人事異動を廃止すると発表したAIG。国内を13のエリアに分け、異動は原則としてエリア内に限定するとのことです。
先日、WAW!のフォローアップイベントで、高校生から若手社会人に向けて、OECD東京センター長の村上由美子さんがこうスピーチしました。
「私は前職は金融業ですが、稀少なものは価値が上がるということは確かです。今ミレニアル世代のみなさんの価値はどんどん上がっているのです」
現在の人事担当部門の責任者は、就職氷河期の苦難を乗り越え就職した世代かもしれません。今の「ミレニアル世代の取り合い」状況に違和感を感じる人も多いかと思いますが、働き方改革でミレニアル世代をひきつける、働きやすく、フェアで、魅力的な会社になること。それが人材獲得競争を勝ち残る術なのです。
(文=白河桃子/少子化ジャーナリスト、働き方改革実現会議民間議員、相模女子大学客員教授)