インターネット証券のマネックスグループは4月16日、580億円分もの仮想通貨を流出させたコインチェックを完全子会社にした。当初の買収額は36億円。コインチェックの新社長には、マネックスの勝屋敏彦・取締役兼常務執行役が就いた。
コインチェックの創業者である和田晃一良社長兼CEO(最高経営責任者)と大塚雄介取締役COO(最高執行責任者)は取締役を退任するが、執行役員として残りシステム業務を担当するため、「火種として残った」との指摘もある。
買収劇のシナリオは、金融庁(森信親長官)とマネックスのオーナー、松本大社長が書いた。
金融庁は3月末までにコインチェックの処理にメドをつけたかった。昨年4月、改正資金決済法を施行。世界に先駈けて仮想通貨交換業者に登録制を導入した。登録制になって1年の節目で、仮想通貨バブルを終焉させる考えだった。
マネックスの発表資料によると、コインチェックの2017年3月期の実質的な売上高は9億8000万円。営業利益は7億1900万円。営業利益率は実に73%である。収益源は顧客が仮想通貨を売買する際の手数料。10%前後の手数料を取っていた。
17年は空前の仮想通貨ブームで取扱高は急増。コインチェックは国内最大規模の170万口座を抱え、取扱高は3兆9000億円に達した。
マネックスは4月26日の決算発表の席上、16日に買収を完了したコインチェックの18年3月期業績(概算値)を公表した。それによると売上高は626億円、営業利益は537億円。仮想通貨・NEM(ネム)の不正流出問題の補償として473億円の特別損失を計上したが、それにもかかわらず税引き前利益63億円だった。
仮想通貨の高騰(仮想通貨バブル)で、売上高は前年比で64倍。営業利益は75倍になった。それ以上に驚かされたのは、売上高営業利益率が86%に達したことだ。まさに荒稼ぎである。「松本氏は高い利益率に目がくらんだ」(インターネット証券会社大手の社長)といった辛辣な見方が出る理由が、ここにある。