お茶の輸出は江戸時代から始まっていた
緑茶の輸出はいったい、いつごろから行われていたのか。日本茶輸出促進協議会のサイトを見ると、興味深いデータが出てきた。最初の輸出は江戸時代の1610年。オランダの東インド会社が長崎の平戸からヨーロッパに日本茶を輸出したのが始まりだ。黒船来航後は各国と修好通商条約を結び、1859年には181トンが輸出されている。
当時から重要な輸出品となり、明治後半には2万トンを超える輸出を誇った。昭和に入り軍国主義時代に突入すると、輸出量は急減していった。戦後、アメリカの食糧援助の見返り物資として茶が選択され、製茶産業が息を吹き返した。
1953年には輸出量が1万5000トン超と復活を果たした。しかし、その後、円高や中国産のお茶の進出で日本茶の輸出は再び低迷期を迎える。1991年の輸出量はわずか253トンと最低に落ち込んでしまった。その後、品質向上などに取り組み、2005年には1000トン台、2010年には2000トン台へと増えた。海外での健康志向の高まりと和食ブームでお茶人気が高まり、輸出量・金額ともに増加傾向となっている。
ずいぶんと浮き沈みがあったのである。
最大のライバルは年間輸出量20万トンの中国
緑茶をめぐる国際的な状況はどうなっているのだろうか。農林水産省は「茶の輸出戦略」(2013年)のなかで、「世界的な健康志向の高まりから、各国における緑茶の需要が増加してきており、他国産に比べてブランド力がある日本茶が進出しやすい状況」と指摘。その資料には最大の輸出相手国であるアメリカの緑茶輸入実績が記載されている。2011年と古いデータだが、数量の1位は中国で1万3570トン。2位が日本で1419トン、3位はドイツで701トンとなっている。もっとも、金額となるとトップの中国が4430万ドルなのに対し、2位の日本は3116万ドルと健闘している。中国茶が極端に安いということだ。単価でみると、日本茶は1キロ当たり21.96ドル。これに対し中国茶は3.27ドル。日本茶の値段は中国茶の6.7倍になっている。
日本茶は価格競争では太刀打ちできないが、ブランド力や高品質で勝負している。
日本貿易振興機構(ジェトロ)の報告書によると、最大のライバル・中国の緑茶輸出量は2013年から15年にかけ、毎年20万トンを超え、15年は27万トン超に達した。主な輸出先はアフリカで、年間輸出量の約65%を占めている。日本と競合する輸出先で輸出量が多いのはアメリカ、ドイツ、香港などである。
こうした状況下、日本国内では有機栽培茶への関心が高まっている。欧米市場でニーズが高いのが有機栽培茶だからだ。特に欧州は有機栽培重視で、日本から欧州に輸出する有機茶の割合は輸出量の74.5%に達する。今年1月、農水省が開いた茶の有機栽培推進会議には全国の茶産地から200人以上が集まったという。
さらなる品質アップとブランド力強化に向けた取り組みが全国の茶産地で続いている。
(文=山田稔/ジャーナリスト)