業界環境の激変に耐えられない居酒屋も出てきている。居酒屋など7店舗を運営していた福井県のAKSは、全国的に飲食店を展開するオーイズミを中核とするオーイズミグループに事業譲渡を模索し、2017年4月に設立されたオーイズミフーズ北陸に会社分割によって事業承継を行った。その後、AKSは2018年2月に裁判所から特別清算開始命令を受けている。負債総額は約7億627万円だ。
「居酒屋」の倒産、ピークに迫る132件に
酒類販売業者の倒産を業種別に見ると、「酒類卸」が12件(前年比50.0%増)、「酒類小売」が32件(同33.3%増)、「居酒屋」が132件(同18.9%増)となっている。いずれも前年度に比べて大幅に増加しており、特に「居酒屋」は東日本大震災発生直後でピークとなった2011年度(140件)以来の水準だ。
負債総額は前年度比66.9%増の131億3000万円で、3年ぶりに増加した。負債規模別では、「1000万円~5000万円未満」が132件(同28.2%増)で最多となっており、構成比の75.0%は過去10年で最高を記録している。一方、「50億円以上」は2010年度から8年連続で発生しておらず、小規模業者の倒産がメインとなっていることがわかる。
「経営体力のない地域の居酒屋や町の酒屋は、今後ますます苦しくなるでしょう。酒類の仕入れ価格が上がったのであれば、本来は価格に転嫁するべきですが、それがなかなか難しい。業界としても、その点を懸念しています」(同)
「我々も、鳥貴族の値上げには注目していました。鳥貴族が値上げすれば、こちらも値上げしやすいですから。しかし、これだけ売り上げが減少している現状を見る限り、少し様子を見る必要があります」(居酒屋チェーン店主)
個人経営に近い業態の倒産が多いと考えられる状況について、山口氏は「店主の年齢構成とも関係しているのではないか」と指摘する。
高齢化した代表や店主が後継者を確保できず、「事業継続は困難」と判断して事業停止や清算に至った可能性もあるというわけだ。酒類販売業者に限らず、今は経営者の高齢化が進んでいる。東京商工リサーチの調査によると、2017年の全国の社長の平均年齢は61.45歳で09年以降で最高となっている。新たなアイデアを創出したり再起を期したりするのは難しい年齢だ。