スルガ銀行(有國三知男代表取締役社長)は9月7日、「第三者委員会の調査報告書の受領と今後の当社の対応について」と題するニュースリリースを出した。業績への影響については、次のように書かれている。
<2019年3月期、中間期ならびに通期連結業績予想への影響につきましては、本日受領しました第三者委員会の調査結果の分析・検討に加え、2018年9月末基準で実施する貸出金の自己査定結果等を精査し、業績予想の修正を決定した際には速やかに開示いたします>
<当社は、2018年6月末時点において、単体自己資本比率は12.14%であり十分な健全性を有しております。今後、独自のビジネスモデルを追求する積極的な経営姿勢の下、第三者委員会の指摘を真摯に受け止め、新体制のもと、(略)企業風土刷新、業務改善に邁進してまいります。より具体的な施策については、遅くとも中間決算公表時までにはお示しできますよう検討を進めます>
【証言1】
7日、静岡県沼津市のホテルで開かれた記者会見に、引責辞任した岡野光喜会長と米山明広社長の姿はなかった。米山社長は傀儡だからであろうが、岡野会長は出るべきだ。和歌山県の県金庫の紀陽銀行で創業家頭取のスキャンダルが発覚し、引責辞任したときには、本人が冒頭5分間ほど辞任の弁を述べた。その後、逃げるように会場を後にし、行員が頭取をガードしていたが、最低でも本人が辞任の弁を述べるべきだ。そうしなかったスルガ銀行は、2度も3度も傷を深くしたことになる。
【証言2】
「会見に創業家出身の岡野会長が出席していない。説明責任をどう考えているのか」という当然の質問が飛んだ。有國社長は「過去のことは(スルガ銀行が設置を決めた)『取締役等責任調査委員会』でしっかり調査していくことで、その状況を見守りたい。そのなかで法的責任などについて判断し、必要ならば(説明責任も)求めていく」。まったく答えになっていない。
【証言3】
融資の焦げ付きに備えた貸倒引当金の大幅な積み増しを迫られることになろう。業績の一段の悪化は避けられず、赤字転落の懸念を指摘する声も上がる。6月末の不良債権額は前年同期の4.6倍の1356億円に膨らんだ。
【証言4】
「もう暴かないでくれ」。スルガ銀行の不正融資問題を追及する弁護士に、不動産業界から圧力がかかっている。日銀の統計では、国内銀行が今年4~6月期に個人の貸家業向けに新規融資した額は5603億円。ピークだった16年7~9月期から半減した。スルガ銀行の融資不正を受けて、引き締めの動きが広がり、不動産業界は青息吐息なのだ。
金融専門紙「ニッキン」(9月7日付)の1面記事『信用金庫 貸家融資から撤退相次ぐ サブリース、延滞が増加』が筆者の注意を引いた。
<信用金庫で、アパートローンなど個人貸家業向け融資から撤退する動きが相次いでいる。東海地区の大手信金は、11月からサブリース契約の新規取り扱いをやめる。首都圏の信金も顧客から苦情が多い不動産関連業者に限定して12月から取り扱わない方針。(中略)18年度に入り返済の延滞が増加。サブリース契約が顧客に不利となる可能性があるため抜本的に見直す>
<首都圏の信金では、18年度に入って複数の案件で不動産関連業者がサブリース契約を信金に隠すよう顧客に指示していたことが発覚。手法が悪質なため、当該事業者の取り扱いをやめる>
<「最寄駅から距離の近い物件しか認めないようにしてから新規案件はない」(北九州地区の信金)、「案件があれば進出地域銀行に顧客を紹介」(都内の信金)など、事実上の中止、撤退の動きが各地に広がっている>
したたかな信金は地域銀行に顧客を紹介してリスクを回避しているという実態が浮かび上がってくる。
スルガ銀行問題の闇は深い。大株主としての創業家の影響力がどこまで残るのかが不透明だ。本当に膿を出し切るためには岡野一族の責任追及と経営からの排除が絶対に必要である。有國社長にそれができるとは思えない。妥協の産物のトップなのだから。
(文=有森隆/ジャーナリスト)