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コッペパンブームの意外な秘密…専門店急増の理由&食べるべき「概念を覆す食感」とは

文=真島加代/清談社
コッペパンブームの意外な秘密…専門店急増の理由&食べるべき「概念を覆す食感」とはの画像1コメダ珈琲店が運営するコッペパン専門店「やわらかシロコッペ」

 昭和世代にとっては給食の定番メニューだった「コッペパン」。実は今、このコッペパンがブームを巻き起こしているという。

 個人店レベルでもコッペパンのみを販売する専門店が全国各地に登場し、喫茶店チェーンのコメダ珈琲店の新業態「やわらかシロコッペ」や、ドトール・日レスホールディングス傘下のサンメリーが展開するコッペパン専門店「パンの田島」の店舗増加など、大手外食企業もコッペパンに参入しているのだ。なぜ今、コッペパンが人気を集めているのだろうか。

日本生まれのコッペパンが独自の進化

「コッペパンとは、片手サイズで紡錘型をしているパンのこと。アメリカのホットドックのパンと形が似ていますが、アメリカでパンの製法を学んだ田辺玄平さんという日本人がコッペパンを生み出したといわれています」

 そう話すのは、1万個以上のパンを食べ歩いたパンマニアでパン料理研究家としてメディアで活躍する片山智香子さん。ちなみに、コッペパンの祖・田辺玄平氏が大正2年に創業した「丸十ぱん店」は、のれん分けなどをしながら、東京都内を中心に現在も店舗を展開している。

 日本で生まれたコッペパンは、その後、給食に取り入れられたことで日本人にとって身近な存在になる。そのため、今も“給食に出てくるパン”というイメージを抱いている人も多いはずだ。

「私自身も、『コッペパンブームが来ている』と聞いたときには『モソモソ食感の給食のパン』を思い浮かべたのですが、コッペパン専門店で提供されるパンは一味違っていました。どれも形は同じですが、パンの生地がしっとりして口溶けがよいものばかりで、パンに挟むフィリングや惣菜もバラエティ豊か。どうやら、独自の進化を遂げているようです」(片山さん)

 もはや、かつての“モソモソパン”ではなくなっているコッペパン。片山さんによると、近年人気を博しているコッペパン専門店には2つのパターンがあるという。

「ひとつは、アミューズメント性のあるコッペパン専門店。お客さんの目の前で材料をはさんだり、あんこやバターなどのフィリングを塗ってくれたりする、ワクワク感を提供する店舗を指します」(同)

 目の前でつくる工程が見られる上、ボリューミーなメニューも多く、男性客からも人気を集めている。なかには、ボリューム感のある惣菜パンだけを売る店もあるそうだ。

「2つ目は、デコレーションなどにこだわった、すでにできあがっているコッペパンを提供する専門店ですね。こちらは大きさも小ぶりでSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)にも映えるので、女性ウケを意識している傾向があります。顧客の好みや目的に合わせているのも、専門店ならではの特徴ですね」(同)

 インスタ映えを意識したブランディングに力を入れている店舗も多く、パンの生地に焼印がついている恵比寿の「えびすぱん」や、パンの生地がデコレーションされている上野の「イアコッペ」など、個性的なコッペパンを販売しているケースが多いという。

セブンの「金の食パン」もブームに貢献?

 片山さんは、「コッペパンブームの火付け役は2軒の専門店にある」と話す。

「特に外せないのは、岩手県盛岡市にある『福田パン』です。同店は、地元のソウルフードとも呼ばれている老舗のコッペパン専門店。60種類ほどのトッピングを組み合わせることができ、目の前で具材を挟んでくれるなど、アミューズメント系コッペパン専門店の代表格として、パン好きの間では人気のお店です」(同)

 しかし、岩手は遠い……と多くのパンマニアがあきらめていたなか、東京・亀有に「吉田パン」がオープンしたという。

「同店は、福田パンで修行を積んだ店主が2013年に開店したコッペパン専門店。吉田パンは福田パンの流れをくんでいるため、『東京でも気軽に福田パンが食べられる』ということで人気に火がつき、全国的にコッペパンが注目されるようになりました。この2店が近年のコッペパンブームに大きな影響を与えていることは間違いありません」(同)

 この2軒の個人店を皮切りに、コッペパン旋風は全国各地に広がっている。その背景には、「2012年前後から起きた食パンブームも大きく影響している」と片山さん。そもそも、食パンが注目されるようになったきっかけは、セブン-イレブンの人気商品「金の食パン」の登場だという。これは、セブンのプライベートブランドだが、高単価高品質路線の「セブンプレミアム ゴールド」の一品だ。

「『金の食パン』が売れたことで、『少し値段が張ってもおいしい食パンを食べたい』というニーズがあることが業界に知れわたりました。以来、多くのパン屋さんで通常の食パンとプレミアム食パンの販売が始まり、食パン専門店もたくさんオープンしたという大きな流れがあります。消費者の価値観が『本当に好きなものを手に入れるために足を運び、お金を落とす』という方向に変化したことで、“品目を絞り込んだパンの専門店”という店舗スタイルが定着したようです」(同)

 このブームを大手飲食チェーンが見逃すはずはなく、各社の新業態が続々と登場した。その代表格が、コメダの「やわらかシロコッペ」やドトール系列の「パンの田島」というわけだ。

 また、コッペパンや食パンなど「扱うパンが1種類に限定されていることも、新規参入のしやすさにつながっているはず」と片山さんは分析する。

「以前、通常のパン屋さんのほかに、2号店としてコッペパン専門店をオープンする予定のシェフにお聞きしたことがあるのですが、パンのつくり方をひとつに限定すると、機械もひとつで済む上に材料も絞り込めるので、新規出店のハードルがグンと下がるそうです。同時に、他業種にとっても新規参入しやすい業態である可能性が高いですね」(同)

パンマニアが選ぶ、おすすめのコッペパンとは?

 全国に広がりを見せるコッペパンブーム。しかし、いまだに“給食のパン”のイメージをぬぐえず、「どれがいいのか、よくわからない」という人もいるかもしれない。そこで、各地のパンを食べ歩く片山さんに、おすすめのコッペパンを聞いた。

「男性におすすめなのが、南千住にある『青木屋』のコロッケパンです。同店はもともと惣菜店を営んでいたため、惣菜のおいしさはお墨付き。コロッケパンは大きなコロッケが2つもはさんであり、ボリュームたっぷりで240円というコスパのよさで人気です」(同)

 一番人気のコロッケパンのほかには、ハムカツパン、トンカツパン、メンチカツパンの4種類のみという潔さ。惣菜パンに対する自信が感じられる。そして、軽食としてコッペパンを楽しみたい人には、前述の「吉田パン」のごぼうサラダ(ポテトサラダ入り)がおすすめとのこと。

「吉田パンは、とても軽くて口溶けがいいパン生地が特徴。これまでのコッペパンのイメージを覆す食感で、とても食べやすいんです。パンにはさまれているごぼうサラダとポテトサラダも味がよく、何個でも食べられそうなメニューです」(同)

 コッペパンの概念を変えるほどの食感を、一度は味わってみたいものだ。最後に、コッペパン専門店ならではの楽しみ方を聞いた。

「アミューズメント系コッペパン専門店であれば、キッチンでつくる工程を見ながら店員さんにおすすめを聞くのもひとつの魅力です。ぜひ、コミュニケーションを取りながらおいしいコッペパンを食べてみてください」(同)

 味も販売方法も独自の進化を遂げているコッペパン。専門店を見かけた際には、一度食べてみるのも一興だろう。
(文=真島加代/清談社)

●取材協力/片山智香子(かたやま・ちかこ)
1万個以上のパンを食べ歩いたパンマニア。国内・海外のパンを求めて旅をするブログ「旅するパンマニア」を更新。近著『愛しのパン』の執筆をはじめ、テレビや雑誌などさまざまなメディアで活躍中。

●「旅するパンマニア

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せいだんしゃ/紙媒体、WEBメディアの企画、編集、原稿執筆などを手がける編集プロダクション。特徴はオフィスに猫が4匹いること。
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