「第2のスルガ銀行」はどこか
金融庁は「スルガ銀行と似たことをやっていた地銀、第二地銀は複数存在する」との基本認識を持っているといわれている。不動産業者が買い手の預金残高を水増しする手口は、ごく一般的で、「アベノミクスが始まる前から行われていた」(新興不動産会社の元役員)というから驚きだ。さらに、「金融庁の前長官がベタ褒めしたスルガ銀行にあやかろうとした銀行は必ずや、複数存在する」(有力地銀の頭取)との見方もある。
「金融庁は、不動産系の貸し出しが多いオーナー色の強い地銀、第二地銀への警戒を強めている。貸し出し先に困るなか、不動産会社が持ち込んできた融資案件を厳しくチェックすることなく、顧客とも会わずに審査を通してしまっているケースが多々ある。途中で返済が滞っても、顧客の顔が見えていないから気づくのが遅れる。こうした『中間与信』は、きちんと管理ができていないのが実態だ」(外資系証券会社の金融担当のアナリスト)
スルガ銀行に刺激されて、アパートローンに急傾斜していった地銀、第二地銀の具体的な名前も取り沙汰されている。
東京都内で急成長した信用金庫に注目する向きもある。この信金は“ミニ・スルガ銀行”と金融業界で評されていたという。
うがった見方をする金融関係者もいる。
「金融庁にしてみれば、スルガ銀行の組織的不正を見逃したのは自分たちの失態であり、頭が痛い。そんな最中に、第二のスルガ銀行の存在が明らかになるのはマズイ。TATERUと西京銀行の一件は、スルガ銀行騒動の渦中で表沙汰になった。スルガ銀行の陰に隠れてウヤムヤにすることを狙った知恵者がいるのではないのか」(別の地銀の頭取)
富裕層以外の個人向け不動産融資を全面的にストップする金融機関が相次いでいる。“サラリーマン大家バブル”が弾け、いくつかの銀行が傷を負うとの指摘は杞憂なのか。そもそも、セミナーで釣ったド素人に割高の物件を押し売りするビジネスが、有力地銀で成り立っていたこと自体、おかしかったのである。
国内銀行の4~6月期の個人の貸家業向けの新規融資は5603億円。ピークだった16年7~9月期から半減した。新興不動産業界は青息吐息の状態だ。
19年3月末までに、新興の上場不動産会社の経営破綻が表面化するといった不吉な予言もある。そうなれば第二のスルガ銀行が複数、水面に浮上することになる。
(文=編集部)