「どのカップ麺を買おうか?」
「どのファストフード店に入ろうか、何を注文しようか?」
と迷うことはありませんか。「買うもの、食べるものはいつも決まっている」という人もいるでしょうが、何を基準に選んでますか?
厚生労働省は、より健康な食生活を送るために、日本人の食事摂取基準を公表しています。その2020年版を参考に、人気のカップ麺である「カップヌードル」(日清食品)と「赤いきつねうどん 東」(東洋水産)について、栄養バランスとしてはどちらが良いのか比較してみましょう。
国の摂取基準では、熱量(エネルギー)と3大栄養素(たんぱく質、脂質、炭水化物)、ビタミン、ミネラルそれぞれについて、必要量や摂取目標量等の数値が示されていますが、今回は熱量の必要量と三大栄養素の目標量で栄養バランスを比較します。
食事摂取基準では、30~49歳の身体活動レベルが普通の人は、1日の熱量の必要量を男性2700kcal、女性2050kcalとしています。男性と女性では必要量等でやや差はありますが、今回は30~49歳の男性で身体活動レベルが普通の人の場合で比較をします。
赤いきつねは、カップヌードル1個とバナナ1本分
では、1日3食の熱量配分をどうすればよいでしょう。3食で2700kcal、1食当たり900kcalになります。もちろん平均値なので、2:3:5の割合にすると、朝食540kcal、昼食810kcal、夕食1350kcalになります。ただし、間食や夜食をする場合は、どこかを削らなければなりません。
赤いきつねは、麺が74g、かやくが22g、熱量は432kcal。カップヌードルは、麺が65g、かやくが13g、熱量は351kcalです。赤いきつねは、カップヌードルより麺が多く、大きな揚げもあるので、重量が9g多く、熱量は81kcal高くなっています。熱量だけでいうと、赤いきつねは、カップヌードルとバナナ1本を食べていることとほぼ同じです。
3大栄養素のバランスはカップヌードル
たんぱく質、脂質、炭水化物の3大栄養素の目標摂取量は、総熱量に対し「たんぱく質が13~20%」「脂質が20~30%」「炭水化物が50~65%」です。中央値を取ると、たんぱく質16.5%、脂質25%、炭水化物57.5%となります。つまり、たんぱく質2:脂質3:炭水化物7くらいの割合で摂取するのが理想的だということです。
たんぱく質はカップヌードルも赤いきつねもほぼ同じです。脂質と炭水化物は、赤いきつねのほうが4.5g、炭水化物が9.9g多くなっています。たんぱく質と炭水化物は、1gで4kcalですが、脂質は1gで9kcalもあるので、脂質が多いと熱量も多くなります。
赤いきつねは、カップヌードルと比べると、たんぱく質が同じくらいの量なのに、脂質と炭水化物が多くなっています。3大栄養素の比率からすると、脂質はたんぱく質の1.5倍、炭水化物は3.5倍程度が理想的です。
カップヌードルは「脂質がたんぱく質の約1.4倍」「炭水化物が約4.2倍」ですが、赤いきつねは「脂質がたんぱく質の約1.8倍」「炭水化物が約5.1倍」です。栄養バランスとしてはカップヌードルのほうが良いといえます。
カップ麺を選ぶ時は塩分量を最優先に
カップ麺で一番注意しなければならないのは、塩分(食塩相当量)です。カップ麺は、塩分が多く含まれる食品の代表的なものです。食塩相当量の摂取基準の目標量は、成人男性は1日7.5g未満、女性は6.5g未満です。
消費者庁は「栄養成分表示を活用しよう」というパンフレットで、1日当たりの食塩摂取量で一番多いのはカップ麺の5.5g、2番目がインスタントラーメンの5.4gであることを訴え、塩分摂取量を減らすように警告しています。カップヌードルには4.9g(目標量の65.3%)、赤いきつねには6.6g(同88.0%)も含まれています。
塩分は、みそ汁にも多く含まれていると思いがちですが、例えばカップ味噌汁の「カップ料亭の味 赤だしとうふ 24g」(マルコメ)には、2.3gしか含まれていません(熱量44kcal、たんぱく質2.6g、脂質1.0g、炭水化物5.8g、食塩相当量2.3g)。カップ麺の塩分が、いかに多いかわかります。カップヌードルの4.9gも多いですが、赤いきつねの6.6gよりは1.7gも少ないので、どちらかといえばカップヌードルのほうがお勧めです。
軍配はカップヌードルだけれどスープは残す!
カップ麺は、いつ食べますか? 昼食で、夜食で、間食で、いろいろありますが、しっかりとした食事をとるという点では、カップ麺だけでは栄養成分を十分取ることはできません。やはり、間食や夜食ということが多いでしょう。
そうであれば、できるだけ摂取熱量は低いほうが良いでしょう。そして何よりもカップ麺を選ぶ時は、塩分(食塩相当量)を確認しましょう。できるだけ、塩分の少ないものを選びましょう。そして「スープは残す」ことを心掛けてください。
スープには塩分がかなり含まれています。カップヌードルには、4.9gの塩分のうちスープには2.5g、赤いきつねには6.6gのうち3.8gと麺より多いのです。いかに、スープに多くの塩分が含まれているかがわかります。スープを飲まないだけでも、塩分摂取を減らすことができます。
どうしても「スープは美味しいので飲みたい」という人は、半分だけ飲んで残りは捨てることから始めましょう。健康への道は「薄味に慣れること」です。カップ麺だけでなく、麺類は全般に塩分が多く含まれている食品です。できるだけスープは飲まないで残しましょう。
シーフードヌードルのほうが塩分は少ない!
カップヌードルの「シーフードヌードル」は、カップヌードルに比べると塩分が0.2g少なくなっています。「シーフード」というネーミングなので塩分が多いと勘違いしやすいですが、熱量も11kcalも低いのでお勧めです。こちらも、全体で4.7gの塩分のうちスープには2.5gも含まれています。
一方、塩分が多いように思える「カップヌードルしお」も、カップヌードルに比べ0.1g多いだけです。しかも、全体で5.0gのうちスープに2.8gも含まれているので、スープを残せば塩分の摂取量をかなり減らすことができます。
(文=垣田達哉/消費者問題研究所代表)