大塚家具が危険水域にある。11月14日発表の2018年1~9月期決算は、売上高が前年同期比12.5%減の273億円、最終損益が30億円の赤字(前年同期は58億円の赤字)だった。最終赤字幅は縮小したが、固定資産売却益など特別な利益を計上したことが大きく影響したためであり、根本的な状況が改善したわけではない。本業の儲けを示す営業利益は48億円の赤字と前年同期から赤字幅は8億円拡大しており、深刻さは増しているといえる。
大塚家具は、リストラや資産の切り売りで当座をしのいでいる。2月に大塚家具の「ライフスタイルショップ名古屋駅前」(名古屋市)を閉店した。4月には「名古屋星崎ショールーム」(同)、5月には創業の地、埼玉県春日部市立地の「春日部ショールーム」を閉店している。
春日部ショールームといえば、大塚久美子社長の父親で創業者でもある大塚勝久氏が同店の目と鼻の先に新しく立ち上げた「匠大塚」の大型家具店との競争が話題になった。両者は経営方針をめぐって激しく争ったが、春日部の地では両者が展開する店舗が直接戦うことになり、親子対決の「第2ラウンド」ということで注目を浴びた。結局、匠大塚の店舗は残り、大塚家具の春日部ショールームは撤退することになったわけだが、このことをもって久美子社長の経営判断が間違っていたと指摘する識者もいる。いずれにせよ、同店舗の撤退が大塚家具の退潮の決定的な象徴となった感があることは否めない。
大塚家具は、土地や建物といった固定資産を売却することで赤字幅を縮小している。18年1~9月期は11億円の固定資産売却益を計上した。
固定資産の売却と共に赤字縮小に役立っているのが、投資有価証券の売却だ。投資有価証券とは、子会社など市場性のない株式や長期保有の債券などのことをいう。大塚家具は18年1~9月期において9億円の投資有価証券売却益を計上している。その投資有価証券も尽きようとしており、13年12月末の段階では117億円あったが、今年9月末には6億円まで減った。極めて近い将来、投資有価証券の切り売りでしのぐことはできなくなるだろう。
現預金の目減りも深刻だ。15年12月末の段階では109億円あったが、今年9月末には22億円まで減った。現預金に関しては、銀行からの融資で賄う考えのようだ。複数の銀行と結んでいた50億円の融資枠(コミットメントライン)を解消し、10月に新たに7億円を借り入れた。これで当座はしのげるだろうが、業績不振が続くなか、今後も金融機関から融資が得られるかは不透明といえる。現金枯渇の危機は去っていない。