東芝は11月12日、7000億円の自社株買いの具体的な方法を発表した。自社保有分を除く発行済み株式総数の30%に相当する最大1億9257万2200株を、12日の終値と同額の1株3635円で買い付ける。1株当たりの買い付け価格は、昨年末行った大型増資の新株発行価格に比べ実質38%高い。13日の取引開始前に東京証券取引所の立会外取引で取得するとした。
そして翌13日、1208億円(3322万8600株)の自社株を買い付けた。予定していた7000億円の17%にとどまった。仕切り直しとなり、あらためて14日、5792億円(1億5103万3600株)の自社株を取得すると発表。14日の終値の1株3835円で買い付ける。前回より200円高い。
15日、152億円(397万1700株)の自社株を買い付けた。さらに21日、1071億円分の自社株買いを実施。購入価格は前日終値の1株3925円で、これまででもっとも高かった。過去2回分を合わせ、立会外取引での取得額は2431億円。
当初予定の7000億円の65%が未消化となったため、残る4569億円を通常の取引時間(立会取引)で2019年11月までに順次買い進める。立会外での買い付けに比べて、株式の需給の改善期待が薄れるとの見方から、22日の東京株式市場で東芝の株価は一時、前日比8%安の3545円まで下げた。
東芝の立会外取引を使った自社株買いは、なぜ不発に終わったのか。
昨年末の6000億円の大型増資を引き受けた海外ファンドなどは、「株価がさらに上昇する」と判断して、今回は応募しなかったようだ。
東芝は19年11月までに7000億円の自社株買いを完了させる方針で、取得した自社株は一定規模を消却する。すなわち、また時間はたっぷりあるので慌てて売ることはないという判断をしているとみられる。株価に合わせて東芝は自社株買いの価格を引き上げた。海外ファンドは、さらに株価を引き上げるよう圧力を強めるだろう。経営陣は株高が続くような積極的な施策を求められることになる。
東芝としては、うるさ型のファンドに自社株買いに応募してもらい、大株主名簿から消えてもらうつもりだったが、そんなに甘くなかった。19年11月まで「物言う株主」との虚々実々の駆け引きが続く。