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大崎孝徳「なにが正しいのやら?」

日産、エンジニア「モノづくりの楽しさがない」発言の深刻さ…ゴーン改革の大きすぎる傷

文=大﨑孝徳/デ・ラ・サール大学Professorial lecturer
日産、エンジニア「モノづくりの楽しさがない」発言の深刻さ…ゴーン改革の大きすぎる傷の画像1日産自動車グローバル本社(「Wikipedia」より)

 世間を騒がせている日産自動車の問題に関し、ニュース番組で同社のエンジニアがインタビューに答えていた。コメントのなかには「ゴーン改革によりプラットフォームが共通化され、モノづくりの楽しさがなくなってしまった」といった内容が含まれていた。

 自動車のプラットフォームとは、一般にフレームやパワートレインなどにより構成される自動車の骨組みや基礎部分であり、これをベースにボディが被せられて、自動車は完成する。

 プラットフォームの共通化は、世界的に自動車業界全体のトレンドであり、ゴーン改革がなくとも進行していただろうが、それはともかく、「プラットフォームの共通化により、モノづくりの楽しさがなくなってしまった」というコメントは、エンジニアとしての正直かつまっとうな意見であると感じた。

なぜプラットフォームを共通化するのか?

 それでは、まずプラットフォームの共通化のメリット・デメリットについて整理しよう。

 自動車の開発には恐ろしいほどの資金と時間が必要になるわけだが、プラットフォームを共通化すれば、こうしたコストを大幅に削減することができる。また、製造ラインの共通化、共通化された部品の大量購入による調達価格の低下など、規模の経済を得ることもできる。このため、プラットフォームの共通化は社内に限定されず、マツダのロードスターとフィアット・スパイダーのように、会社の違いという垣根を越えて実行されている。

 一方、デメリットに注目すると、まず車種ごとの個性を強調した商品づくりが困難になるという点があげられる。なぜなら、すでに基礎となるプラットフォームが決まっているため、エンジニアができることといえば、ボディや内装の設計などに制限されるからである。

 自動車は単なる消費財とは異なり、こだわりを持つユーザーが数多く存在する。こうしたプラットフォームが共通化された自動車に対して、こだわりを持つユーザーは「どれも同じ、魅力がない」と感じる場合も少なくはないだろう。

大﨑孝徳/香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授

大﨑孝徳/香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授

香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授。1968年、大阪市生まれ。民間企業等勤務後、長崎総合科学大学・助教授、名城大学・教授、神奈川大学・教授、ワシントン大学・客員研究員、デラサール大学・特任教授などを経て現職。九州大学大学院経済学府博士後期課程修了、博士(経済学)。著書に、『プレミアムの法則』『「高く売る」戦略』(以上、同文舘出版)、『ITマーケティング戦略』『日本の携帯電話端末と国際市場』(以上、創成社)、『「高く売る」ためのマーケティングの教科書』『すごい差別化戦略』(以上、日本実業出版社)などがある。

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