世間を騒がせている日産自動車の問題に関し、ニュース番組で同社のエンジニアがインタビューに答えていた。コメントのなかには「ゴーン改革によりプラットフォームが共通化され、モノづくりの楽しさがなくなってしまった」といった内容が含まれていた。
自動車のプラットフォームとは、一般にフレームやパワートレインなどにより構成される自動車の骨組みや基礎部分であり、これをベースにボディが被せられて、自動車は完成する。
プラットフォームの共通化は、世界的に自動車業界全体のトレンドであり、ゴーン改革がなくとも進行していただろうが、それはともかく、「プラットフォームの共通化により、モノづくりの楽しさがなくなってしまった」というコメントは、エンジニアとしての正直かつまっとうな意見であると感じた。
なぜプラットフォームを共通化するのか?
それでは、まずプラットフォームの共通化のメリット・デメリットについて整理しよう。
自動車の開発には恐ろしいほどの資金と時間が必要になるわけだが、プラットフォームを共通化すれば、こうしたコストを大幅に削減することができる。また、製造ラインの共通化、共通化された部品の大量購入による調達価格の低下など、規模の経済を得ることもできる。このため、プラットフォームの共通化は社内に限定されず、マツダのロードスターとフィアット・スパイダーのように、会社の違いという垣根を越えて実行されている。
一方、デメリットに注目すると、まず車種ごとの個性を強調した商品づくりが困難になるという点があげられる。なぜなら、すでに基礎となるプラットフォームが決まっているため、エンジニアができることといえば、ボディや内装の設計などに制限されるからである。
自動車は単なる消費財とは異なり、こだわりを持つユーザーが数多く存在する。こうしたプラットフォームが共通化された自動車に対して、こだわりを持つユーザーは「どれも同じ、魅力がない」と感じる場合も少なくはないだろう。