本連載前回記事で、かつては“ぜいたく品”というイメージが強かった輸入車が地方でも売れるようになってきた事情についてお伝えした。日本市場において輸入車は着実に存在感を高めており、12月7日に決定した「2018-2019日本カー・オブ・ザ・イヤー」には「ボルボXC40」が輝き、2年連続でボルボの受賞となった。
そして、輸入車人気拡大の背景には、もうひとつ見逃せない要素がある。それが、日系ブランドのラインナップに魅力的なモデルが少なくなってきているという事情だ。
マツダやスバルが選ばれる理由
ここ最近、日系ブランドではマツダやスバルのモデルが注目されている。クルマを単に移動手段としてだけではなく、趣味性を持って所有するユーザーにとっては、トヨタ自動車や日産自動車、ホンダのラインナップには、なかなか「これだ」というモデルが見つからなくなったという。そこで、かねて自動車専門誌やカーマニアの間で注目されていたマツダやスバルに、多くのユーザーが関心を寄せているのである。
特にスバルはかつて“マニアックブランド”の代表のような扱いで、家族のクルマとして夫がスバル車を購入しようとすると妻が嫌がるといったパターンも目立ったが、運転支援システム「アイサイト」の導入によって、そんなムードは一気に消え去った。
しかし、マツダやスバルが注目され始めてから両ブランド車の多くがモデルチェンジしているが、トヨタや日産車などからの代替えが目立ってきたこともあり、古参の愛好家のなかには「かつてのマツダやスバル車の乗り味が薄れ、トヨタや日産っぽくなった」と不満を持つ人もいるようだ。
筆者は、この両ブランドをあえて“踊り場ブランド”と呼んでいる。トヨタや日産車から一度はマツダやスバル車に移ったものの、「やっぱりトヨタ(もしくは日産など)がいいや」と回帰するか、「輸入車のほうがもっとおもしろそう」と輸入車への代替えに進むというふうに、日系ブランド車から輸入車へ一気に代替えを進めず、マツダやスバル車でワンクッション置くといった購買行動も目立っているからだ。もちろん、そのままマツダやスバル車を気に入って乗り続ける人もいる。
いずれにせよ、日系ブランドのラインナップが軽自動車や実用性の高いコンパクトモデル、ミニバンなどに偏った結果として、輸入車の注目度が高まっている。それが、今の新車販売市場のトピックのひとつといえるだろう。
日本車の“トレンド乗り遅れ”に中国市場で不満
また、単純に「おもしろそう」というだけでなく、欧米車のトレンドの進化に比べ、日系ブランド車がそれらに乗り遅れているような部分を敏感にキャッチしている人も輸入車に流れているといえる。
欧米車のトレンドのすべてが正しい方向であるともいえないが、ダウンサイズターボエンジンが欧米、特に欧州車では当たり前となった頃、日本車はまだ排気量が大きめの自然吸気エンジンばかりを搭載しており、中国市場では「欧州車はターボがついているのに、同じ価格帯の日系ブランド車はターボがついていない」とネガティブに見る消費者が目立ったと聞く。メーカー側にはつくり手としてダウンサイズターボを採用しない理由があるのだろうが、販売現場では「こっちにあって、そっちにない」は、それだけ販売促進の条件が厳しくなることを意味する。