グループ内で主導権を握る旧住友銀行出身者が銀行頭取を歴任する一方で、旧行間のバランスを取るため、FG社長は旧三井銀行出身者を充てる“たすき掛け”人事を行ってきた。バランスは社名にも表れた。日本名では「三井住友」と三井が先だが、英語表記では「SM」と住友を先にするといった具合だ。
こうしたガバナンスの不全を金融当局が問題視。17年4月、銀行頭取を務めた旧住友銀出身の國部氏がSMFG社長に就くことで、持ち株会社に実権を移した。今回、SMFGの会長と社長、銀行頭取を住友が独占したことで、旧住友による旧三井支配に決着がついた。
東京海上ホールディングス
東京海上ホールディングス(HD)は、経営陣を一新する。6月に永野毅社長が代表権を持たない会長に就き、小宮暁専務が社長に昇格する。小宮氏はグループ最高経営責任者(CEO)と東京海上日動火災保険の会長を兼務する。隅修三会長はHDの役職を退く。
中核子会社の東京海上日動火災保険は北沢利文社長が副会長になり、広瀬伸一東京海上HD専務執行役員が社長になる。会長はHDの社長のポストなので、永野氏から小宮氏に交代する。6月下旬のHDの株主総会後に新体制に移る。
持ち株会社と事業会社のトップが同時に交代するのは、2002年に持ち株会社制に移行して以降初めて。他社に先駈けて海外の大型M&A(合併・買収)を牽引してきた隅会長、永野社長から次の世代にバトンが渡る。
川崎汽船
川崎汽船は4月1日付で村上英三社長が会長に就き、明珍幸一(みょうちん・ゆきかず)取締役専務執行役員が社長に昇格する。
川崎汽船は4月に創業100周年を迎える。自動車船などコンテナ船以外の事業の収益改善や米中貿易摩擦による貿易量の減少による船舶の運賃の低落などが待ち受けている。
4割近くの株を持つ旧村上ファンドの出身者が設立した投資ファンド、エフィッシモ・キャピタル・マネジメントの存在も大きい。16年の株主総会で村上社長の取締役再任議案でエフィッシモが反対に回ったことで賛成率が57%まで下がり、かろうじて再任された。
旧村上ファンドグループが「海運の再編を仕掛けるのではないか」と取り沙汰されている。川崎汽船にどんな提案をするのか。明珍新社長にとって頭の痛い問題だろう。
(文=編集部)