ここ数年、過去最高かと思えるほど個人の不動産投資ブームであった。特に、普通のサラリーマンが不動産投資を始めるケースが多かったが、どうやら一旦は収束しそうな気配も漂い始めた。
その理由は2018年に起こったかぼちゃの馬車とスルガ銀行の事件である。スマートデイズというシェアハウスを運営する会社が破たんしたことにより、多くの個人投資家たちの不動産運用が行き詰まったのだ。
また、シェアハウス投資に対する融資において審査書類の偽造などが発覚。スルガ銀行は金融庁から重い処分を受けた。金融庁は当然のごとく全国の金融機関に対して不動産担保融資の審査をきちんと行うように通達した。その結果、個人の不動産投資家に対する融資審査が以前と比べてかなり厳しく行われるようになっている。その影響で、個人投資家向けの不動産市場は極端に取引件数を減らしている。
そうでなくても、この個人投資家向けの不動産市場は大きな爆弾を抱えている状態にある。仮に金利が2%ほど上がると、投資物件の投げ売りが始まる可能性が高い。自己破産者も続出するだろう。場合によっては自殺者が急増するかもしれない。
その仕組みを説明する。
まず、不動産に投資する人々は物件の購入資金をほとんど融資で賄う。その理由は、手元に資金を残しておかないと、次の融資が受けられないからだ。例えば、1億円の預金がある人が1億円のアパートを買う場合、理想的には投資資金の全額である1億円の融資を受けたいと考える。そうすれば、手元の1億円はそのまま残るからだ。
しかし、銀行は通常、全額の融資は行わない。よく出して8割程度だ。だったら2000万円を手元資金から出せばよいと思われるが、実際にそうする個人投資家は少ない。どうするかというと、仲介業者などと示し合わせて1億2500万円の売買契約書を作成して、それを銀行に見せる。そうすると1億円の融資を引き出すことも可能になるのだ。
これを業界用語では「書き上げ」と呼ぶ。つい2年ほど前まで「書き上げ」は業界内で日常茶飯事の光景であった。偽造の契約書を出される銀行側も、そこはあうんの呼吸。わかっていても知らないフリをしていた。彼らとて8000万円よりも1億円貸したほうが成績は上がる。