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過去の遺物「ポケベル」、なぜ再び普及の兆し? より身近&重要なツールに

文・取材=A4studio

 昨年は6月の大阪北部地震、7月の西日本豪雨、9月に関西を襲った台風21号、北海道胆振東部地震――。もともと日本は自然災害の多い国ではあるが、昨年は特に災害の多い1年であった。緊急用の備蓄食料など、改めて災害への備えを見直す機会が増えている今、防災ツールとして「ポケベル」が注目を集めていることをご存じだろうか。

 ポケベルといえば1990年代、ビジネスパーソンや女子高生などの若者らに大流行したコミュニケーションツール。当時は入力できる文字数や種類なども限られていたため、「0840(オハヨウ)」のような他愛もない会話が中心ではあったが、実は現在、ポケベルの電波は、地方自治体向けの防災無線として急速にシェアを伸ばしつつあるのだ。

 かつて携帯電話の普及によって姿を消し、過去の遺物となってしまったポケベルは、いったい、どのようにして防災無線へと生まれ変わったのだろうか。ポケベル波を活用した防災無線事業「280MHzデジタル同報無線システム」を展開する、日本に現存する唯一のポケベル波提供会社「東京テレメッセージ株式会社」の代表取締役である清野英俊氏に、話を聞いた。

遠くまで届き、建物内にも入りやすいポケベル波は防災無線に最適

 どういった理由で、ポケベル波が防災無線へと転用されたのだろうか。

「まず、ポケベル波は280MHz帯の周波数を使って送受信が行われます。基本的に電波はガラス窓から屋内へと侵入するのですが、この280MHzというのは、ガラス窓からはみ出さず、なおかつガラスで弾かれない絶妙な大きさの波長なのです。

 また、かつてポケベルを利用していた方ならご存じかと思いますが、ポケベル波で送受信されるのは文字データです。これは携帯電話や従来の防災無線に使われる音声データに比べると使用されるデータ量が格段に小さいため、受信する側はキャッチがしやすく、音声データよりも遠くまで届けることが可能となっています。

 つまりポケベル波は従来の防災無線に比べて、遠くまで届き、かつ建物内であってもキャッチできる電波なのです。当社の手掛ける『防災ラジオ』は、ポケベル波の文字データを受信して、合成音声で読みあげるものとなっています」(清野氏)

 コミュニケーションツールとしてのポケベルは、2000年代に入ってほぼ姿を消していたかと思うのだが、いつから防災事業を手掛けているのだろうか。

「ポケベルのピークは1996年で、その後、料金の下がったPHSや携帯電話に取って代わられるかたちで衰退していきました。当時ポケベル波を提供していた会社はほとんど撤退してしまったのですが、当社は東京電力などがスポンサーとなって設立された会社だったため、撤退ではなく事業再建というかたちをとり、ポケベル事業を継続することとなったのです。その後2001年に株式会社YOZANに吸収されるのですが、そのとき『ポケベル波は防災に最適だ』と考えていた技術者が入社し、06年にポケベル波を転用した防災用の通信プロトコルを完成させました。それが当社の防災事業の始まりです」(同)

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