マツダ、新法則に基づく「CX-30」に込めた野望…あえてCX-3とは“別車種”と強調の事情
マツダは今年、2台の新型車をデビューさせる予定になっている。1台は「アクセラ」の後継車種となるコンパクトハッチバック&セダンの「マツダ3」。そして、もう1台はコンパクトクロスオーバーSUVの「CX-30」だ。CX-30という車名になじみがない人も多いだろうが、当然である。これまで存在しなかった新しい車種であり、新しい法則に基づいた車名なのだから。
これまで、マツダのコンパクトクロスオーバーSUVとしてラインナップしていたのは「CX-3」である。CX-3とCX-30の違いは、まずボディサイズ。全長4275mm×全幅1765mmのCX-3に対し、CX-30は全長4395mm×全幅1795mmと一回り大きい。その恩恵を受けているのは広がった後席と荷室で、CX-3に比べて実用性は大きく高まっている。
「美しいスタイルには多くの評価をいただきましたが、『実用性に関して物足りない』という声も少なくありませんでした」とCX-30の開発エンジニアは言う。
広げた室内で、これまでCX-3では取りこぼしていたユーザーを取り込む。それこそがCX-30が担った使命なのだ。具体的にいえば、子どもがいるファミリー層などをカスタマー候補として狙っている。
ちなみに車体構造の基本設計は、CX-3ではマツダにとって軽自動車(OEM車両)を除けば最小モデルである「デミオ」がベース。しかし、CX-30は一回り大きな「マツダ3」へと格上げされているのもトピックだ。
単純にCX-3のフルモデルチェンジではない理由
興味深いのは車名の違いだ。このCX-30は単にCX-3がフルモデルチェンジして同時に車名を変更したわけではなく、「別車種」とマツダは説明する。その証として、今年の冬と予想されるCX-30の日本発売後も、CX-3は併売されるというのだ。名前も違い、併売されるのであれば、確かに別車種である。
CX-3とCX-30はキャラクター的にはかぶる部分も多いし、一回り大きな車体も、フルモデルチェンジでその程度大型化するのは決して珍しいことではない。だから後継モデルであってもおかしくはないのだが、単純に後継モデルとしなかったのには理由があるのだろう。
基本設計の格上げなどもあり、CX-30の販売価格はCX-3に対して高くなるのは間違いない。ここからは筆者の推測にすぎないが、「CX-3はフルモデルチェンジで車体が大きくなり、価格も上昇した」という評価を避けるために、あえて別車種としたと考えればしっくりくる。
CX-3の次期モデルに関してマツダからの公式コメントはないが、フルモデルチェンジすることなく、いずれフェードアウトする可能性が高いだろう。
2ケタ数字の車名に隠された野望
そんなCX-30は、マツダのラインナップでいえば「CX-3以上、CX-5未満」ということになる。だからCX-3と別車名にするのであっても「CX-4」と名付ければいいように思えるが、実はそうできない事情がある。中国専用車として「CX-4」が存在するためだ。そこで、これまでなかった「30」という2ケタ数字の車名とすることで、バリエーションの拡大を図ったのである。
しかし、この2ケタ車名にはそれ以上の野望が隠されているというのが筆者の見立てだ。CX-3(当面はCX-30と併売)が車体を一回り大きくしてCX-30になるのと同様に、「CX-5」も噂の次期「アテンザ」(車名は「マツダ6」となるだろう)用FRプラットフォームを活用して一回り大きな「CX-50」となり、CX-3の上級移行でコンパクトクラスに空いた穴を埋めるべく、次期デミオをベースにした「CX-20」が登場する。そうやって時間をかけてマツダのSUVのラインナップ構成を変化させて、再構築しようと狙っているのではないだろうか。