プロ野球、昨年の観客動員数が史上最多に…娯楽施設化する球場、ファン以外も楽しめる
プロ野球が開幕して数週間。地上波でのテレビ放送では視聴率で苦戦を強いられるも、直接球場へ足を運ぶファンは増えており、12球団合計観客動員数は6年連続増加と軒並み好調。2018年シーズンは、史上最多を更新する2555万719人とスポーツ興行の観客動員数としては世界的に見ても驚異の数字だ。近年はZOZOマリンスタジアムのホームランラグーンや横浜スタジアムのウィング席が新登場するなど座席増設ブームもあり、今年の動員数はさらに伸びる見込みだ。
また、笹川スポーツ財団の「スポーツライフ・データ2018」によると、「種目別直接スポーツ観戦状況」では、2位「高校野球」5.8%、3位「Jリーグ(J1、J2、J3)」5.5%を大きく引き離し、「プロ野球」が1位の13.7%となっている。これを見てもプロ野球観戦人気をうかがい知ることができるが、なぜ近年ここまでプロ野球観戦が熱くなっているのか。立教大学経営学部でマーケティングを教える有馬賢治教授に話を聞いた。
地域ぐるみの「価値共創」で動員数躍進
「観客動員数や最近の球団の取り組みをみていますと、プロ野球の球団経営が近年大きく変化していると感じます。そのなかで、まず挙げられるのが球団の地域密着化でしょう」(有馬氏)
ひと昔前まではプロ野球といえば巨人や阪神だったわけだが、広島カープ、福岡ソフトバンク、北海道日本ハム、東北楽天といった地方の球団が地元を中心に人気を集めてきたことが、観客動員数最多を更新する大きな理由のひとつといえる。
「スポーツ観戦ビジネスの肝は『価値共創』(消費者と企業との価値の共有・創造)ですが、近年の球団経営をみていますと、プロ野球を通して地元を盛り上げようという地域創生の姿勢を感じます。また、『プロ野球のサービスの満足度調査(2018年)』で総合満足度2位の福岡ソフトバンク、3位の横浜DeNA、5位の東北楽天をはじめ、各球団は“ファンでなくとも楽しめる”空間を提供するため、球場の総合娯楽施設化、いわゆる『ボールパーク化』を推し進めているのも近年の特徴です。これによって、野球にそこまで興味がなくても、『楽しそうだから行ってみよう』と街ぐるみで思わせることに成功しています」(同)
楽天生命パーク宮城には観覧車がフィールドを見下ろすかたちで稼働しており、横浜スタジアム外周には球場に入れなかった人や球場に近い臨場感で野球観戦を楽しみたい人のためにビアガーデンが期間限定で設営されている。ヤフオクドームも「FUKUOKA超・ボールパーク宣言」と称し、100億円超を投じて周辺エンタメ施設の整備に乗り出しているし、北海道日本ハム新球場の球場内に温泉をつくる構想もプロ野球ファンの間で話題になっている。