創業50年を迎えた大手ハンバーガーチェーン「モスバーガー」。50周年記念事業として1月29日よりキッチンカーを導入して話題を呼んでいる。徹底して日本人の嗜好に合わせたハンバーガーを追求し、日本人の主食であるライスバーガーを開発するなど、新しい商品を生み出すことには定評がある。
その一方で、テレビCMやウェブCMにも独自のこだわりがみられる。現在、公式YouTubeなどで公開されているウェブCMが、インターネット上で物議を醸している。
それはお笑いコンビ「トム・ブラウン」を起用し、新商品「とり竜田バーガー」を宣伝する内容だが、「合体漫才」篇ではトム・ブラウンが「とり竜田バーガー」をテーマに独特な世界観でネタを披露。この漫才については「面白い」と好意的な反応が多く見られたが、続いて公開された「超合体漫才」篇は、「合体漫才」篇をニコニコ動画などを念頭に置いたように加工しており、いかにも“ネット民”を狙ったようなつくりになっていることから、賛否両論を巻き起こしているのだ。
そこで、モスバーガーの広報に直接、CMの狙いなどについて話を聞いた。
――トム・ブラウンを起用した「合体漫才」「超合体漫才」のCMの狙い、ターゲット層について教えてください。
モスバーガー SNS上での本CP商品およびブランド名のバズ(会話)を発生させ、ユーザーとのエンゲージメントを深めることが狙いです。ターゲットは主に10代後半から20代後半の若年層ですが、デモグラよりもSNS上でのユーザーインサイトに親和性の高いクリエイティブの制作に努めました。
――ネット上の声としては、「合体漫才」のほうは好評な声が多いようですが、「超合体漫才」のほうは賛否別れているようにみえます。むしろ、賛否が分かれたことで話題性が高まっていると思えますが、これは狙い通りなのでしょうか。
モスバーガー 賛否両論、どちらの声も上がってくることは当初より想定しておりました。近年、八方美人的な全面に配慮をしているコンテンツが増えるなかで、しっかりと人の心を動かすためには徹底的に突き抜けることも大事だと考えています。
そしてそういったコンテンツは、必ず賛否両論、つまり議論を起こすものだと思います。この議論が、総じてみればポジティブなものになるように、今回の企画でもネットカルチャーに対して最大限のリスペクトを尽くす必要がありました。
そのなかで頂いた多数の応援の声、そして否定的な声、どちらも大変ありがたい声だとして受け止め、次のコンテンツ制作に生かしていきたいと考えております。
――特に「超合体漫才」については、ネット民に向けた感があり、「面白い」との声の一方、「狙いすぎてサムイ」と冷めた声が多く見えます。なかには「日清食品のCMとテイストが似ている」との指摘もありますが、ネットの声に対してはどのようにお感じでしょうか。
モスバーガー 貴重なご意見として受け止めております。企画段階でMAD調動画が日清さんを想起することも想定内ではございました。どんなご意見でも、「モスバーガー」について会話をしてくださるユーザーがいてくれることは大変ありがたいことと感謝しております。
――ありがとうございました。
賛否両論巻き起こることを承知で、むしろそれを狙った広告展開をする企業は珍しくない。だが、批判も承知で公開したはずの広告に対し、想定以上の苦情が殺到して謝罪に追い込まれるケースも、しばしば目にする。
モスバーガーは、「ネットカルチャーに対して最大限のリスペクト」と表現しているように、特定の人物を不愉快にさせたり傷つけたりせずに、狙い通り賛否両論を引き起こしているのだ。今後の広告展開にも注目したい。
(文=Business Journal編集部)