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丸紅、純利益2千億円→翌年は赤字2千億円、不安定な経営…巨額買収が苦境招く

文=Business Journal編集部
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丸紅のHPより

 資源高を背景に総合商社の収益の拡大が続いている。三井物産、三菱商事、伊藤忠商事、住友商事、丸紅、双日、豊田通商の7社は22年3月期の連結純利益(国際会計基準)を上方修正し、いずれも最高益となる。なかでも三井物産、三菱商事、伊藤忠商事の純利益は商社業界で初となる8000億円の大台に到達する見通しだ。

 ここでは丸紅にスポットライトを当てることにする。2月3日の東京株式市場で丸紅は一時、前日比58円(4.8%)高の1262円をつけ、2007年7月の最高値を15年ぶりに更新した。丸紅は22年3月期の連結純利益を21年3月期比79%増の4000億円(従来予想は3500億円)に引き上げた。銅や原油、ガス、原料炭など資源価格が高水準で推移しており、金属・エネルギー事業の利益が急拡大。非資源分野でも農業資材などアグリ事業が大きく伸びる。QUICKコンセンサス(9社の予想の平均)の3714億円を上回った。これを好感した買い物が入った。

 総合商社は資源高の恩恵をフルに享受しているが、この環境が続く保証はない。丸紅は25年3月期に今期予想と同じ純利益4000億円を目指す中期経営戦略を発表済みだ。柿木真澄社長は「現在の市況や好調な企業活動には必ずぶり返しがある。原油価格など先行きは非常に不透明で読みにくく、資源高が続かなかった時は打撃を受ける」と慎重な見方を崩さない。

 丸紅は19年3月期に資源高で過去最高の2308億円の純利益を上げた。翌20年3月期は資源価格の下落で1974億円の最終赤字に転落。天国と地獄を経験した。22年3月期は資源高で4000億円と最高益を更新する見込みだが、23年同期は国際資源価格次第では減益になることもあり得る。これが商社担当のアナリストの見方だ。

 丸紅株が15年ぶりの高値をつけた背景には、もう1つの大きな要因がある。懸案だった米穀物子会社ガビロンの売却の方針を打ち出したからだ。

ガビロンの買収は失敗に終わった

 丸紅は1月26日、米穀物集荷・販売大手ガビロン(本社・ネブラスカ州)の穀物事業をカナダの穀物大手バイテラ(親会社の所在地はオランダ)に売却すると発表した。ガビロンの肥料事業など一部事業を丸紅の子会社に移管した上で、23年3月期中に全株式を売却する。丸紅はこの売却で3000億~4000億円の資金回収を見込む。23年3月期中に数百億円の売却益を計上する予定だ。

 2013年、2700億円(当時の為替レート)で米穀物メジャー、ガビロンを買収した。人口増加による消費量の拡大と生産地の不作から、穀物市況の高騰に拍車がかかっていた。丸紅の穀物の年間取扱量は2500万トンと総合商社のなかではトップ。ガビロンを手中に収めれば取扱量は5500万トンを超え穀物メジャーに肩を並べることができる、と豪語した。中国向けの販路拡大で利益を拡大できると先読みし、丸紅としては過去最大の買収に踏み切った。

 13年に朝田照男会長(当時)から社長のバトンを受け継いだ國分文也社長(同)は「ガビロンの買収をテコに16年3月期に純利益2500億~3000億円へと飛躍を目指す」とブチ上げた。しかし、M&A市場のプロの悲観的な予想が的中。高値づかみのツケを払うことになる。ガビロンののれん代500億円の減損損失の計上を強いられ、15年3月期の純利益は従来予想の2200億円から1056億円に半減した。

 経営責任をめぐりお家騒動が勃発するというオマケまで付いた。ガビロン買収の立役者で、次期社長候補と目されていた岡田大介氏が責任を取り退任した。丸紅、伊藤忠の創業者・伊藤忠兵衛の末裔を妻に持つ岡田氏は、米カーギルなど穀物メジャーと渡り合える数少ない日本人と評されていた。

 社長当時にガビロン買収を決断した朝田照男氏が会長として経営陣に残ったため、「トカゲの尻尾切り」(丸紅の若手幹部)と顰蹙を買った。ガビロン買収の後始末をめぐる朝田会長と國分社長の対立は、「大手商社のなかで独り負け」(商社担当のアナリスト)の業績に、大きな影を落とした。

 米国での干ばつや商品価格の下落に加え、米中貿易戦争といった新たな懸念材料が発生、ガビロンはいっそうの重荷になっていた。この間、19年3月期に過去最高の最終利益を計上したのを機に朝田会長が退任、國分社長が会長となり、柿木真澄氏が社長に就任し、現在に至る。19年には外国通信社が「ガビロンを売却する可能性がある」とする関係者の話を伝えた。この時点で売却の検討を始めていたことが明らかになる。

 丸紅の発表資料によると20年3月期のガビロンの純損益は879億円の赤字だったが、21年3月期には215億円の黒字に転換した、という。穀物市況が回復してきたことで、売却する絶好のタイミングと判断したようだ。

 ガビロン売却を発表した1月26日のオンライン記者会見で、丸紅の食料・アグリ・化学品事業を管掌する寺川彰副社長執行役員は「当初の目標は取引量を拡大し、世界の穀物メジャーになることだったが、取引量が増えると市場リスクが高くなり、うまくいかなかった」「買収額が高すぎたこともあり、苦戦を強いられた」「(損失の)すべてをカバーできるわけではないが、肥料事業などが残ることを踏まえて売却を判断した」と述べた。ガビロン買収は失敗だったと、公式に総括したのである。

 エネルギー分野出身の柿木社長にとってガビロンは私情を交えず、ドライに処理できる“負の遺産”だったということになる。

(文=Business Journal編集部)

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