フィリピン最大の銀行、極めて費用対効果低いのに、日本人客専門部署を設置した驚きの理由
海外で生活を始める際、さまざまなことを整備しなければならない。そのなかのひとつに銀行口座の開設がある。筆者はこれまでカナダ、イギリス、アメリカ、香港などで口座を開設してきたが、どの国もこちらが拍子抜けするほど簡単だった。
こうした経験を踏まえ、気軽にフィリピンの銀行へ足を運んだものの、数多くの書類を要求され、そのなかには取得にかなり時間がかかるものも含まれていた。
職場に戻り、同僚のフィリピン人に口座がつくれないという話をすると、「私に任せろ。支店長とは長い付き合いだ」と、何人もの同僚が力強く言ってくれた。「そうか、やはりフィリピンの社会は人のつながり次第なんだな」と納得し感謝したものの、結局、口座を開くことができず、途方に暮れた。
BDO銀行のジャパンデスク
その後、現地に暮らす日本人向けの雑誌で、フィリピン最大の銀行であるBDO(BDO Unibank, Inc.)には「ジャパンデスク」という、日本人を対象にした部門があり、毎月セミナーを開催しているという。そのセミナーで、口座開設の相談にも乗ってくれることを知り、参加した。
セミナーはBDOの本店で開催されており、この回は海外送金を中心とした内容であった。お弁当やみそ汁なども無料で頂けた。こうしたサービスは、海外に住む多くの日本人にとって大変ありがたいものだろう。
セミナー終了後に口座開設について相談したところ、指定の日時に職場近くの支店に行くように連絡を受けた。支店を訪れると、ジャパンデスクから支店にきっちりと連絡が入っていたようで、あっという間に口座は開設され、感動してしまった。たかが口座開設くらいで大袈裟だと思われるかもしれないが、日本では当たり前のことが海外ではそうはならないということは往々にしてあるのだ。
また、セミナーに参加した際、多くの日本人もしくは日本語が話せるメンバーがいたことには大変驚いた。ジャパンデスクという日本人専門の部署があるだけでも驚きだが、ここまでの体制を維持するには、企業としてかなりのコストを要することになるだろう。大きなお世話だが、フィリピンで生活する日本人(1.5万人)という超ニッチなマーケットを対象に投入するコストに見合うリターンを得ることができるのかと、大変興味深かった。
その後、BDOジャパンデスクの下田裕深氏にインタビューする機会を頂戴したので、こうした疑問を中心に話を聞いた。