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大崎孝徳「なにが正しいのやら?」

フィリピン最大の銀行、極めて費用対効果低いのに、日本人客専門部署を設置した驚きの理由

文=大﨑孝徳/デ・ラ・サール大学Professorial lecturer

BDOとは

 BDOはフィリピン最大の銀行であり、従業員数は3万6000人、支店数は1400店となっている。フィリピンの代表的な財閥であるSMグループに属しており、トップはSMの創業者で、もっとも裕福なフィリピン人として知られ、今年の1月に他界したヘンリー・シー氏の娘であるテレシタ・シー氏である。

 SMグループは、フィリピン最大手のSMモールというショッピングセンターを運営しており、SMモールの中にはBDOの支店やATMが設置されている。こうした支店のなかには19時まで、さらには土日も営業している支店があり、15~16時に閉店してしまうことが多い他銀行との明確な差別化が実現している。

 ジャパンデスクは、ヘッドを務める田中嗣久氏のもと、現在35名体制となっている。大きく法人部門と個人部門(個人事業主含む)に分かれている。大企業を中心とする法人部門には責任者を含め23名の行員が配置されており、そのうち日本語を話せるメンバーは4名ほどである。一方、個人部門12名のうち、ほとんどのメンバーは日本語を話すことができる。

 ジャパンデスクは、もともとはフィリピンに進出している日系企業との取引を円滑に行うために2007年に設立された。その後、15年には個人部門が立ち上がっている。個人部門にはヘルプデスクも設けられている。ヘルプデスクの業務内容は、カードの停止や住所変更など多岐にわたる。こうした処理を行うには、各口座のシステムに入らなければならないが、フィリピンの法律により、このような業務はフィリピン国籍の者しか行うことができない。そのため、日本語が流暢なフィリピン国籍の人材が担当している。外国人のためにヘルプデスクまで整備している事例は、世界的に見ても極めてまれなようである。

 ジャパンデスクにおける法人部門の設立に関しては、フィリピンに進出している日系約1500社を対象に、1社でも多くの顧客を獲得し、取引を継続すれば大きなリターンが期待できるため、合理的な判断といえるだろう。

 しかしながら、取引金額も少ない個人向け部門の設立に関しては、やはり疑問が残る。ジャパンデスクの個人部門は一体どのようなことを目的として、どのような業務を行っているのだろうか。

大﨑孝徳/香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授

大﨑孝徳/香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授

香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授。1968年、大阪市生まれ。民間企業等勤務後、長崎総合科学大学・助教授、名城大学・教授、神奈川大学・教授、ワシントン大学・客員研究員、デラサール大学・特任教授などを経て現職。九州大学大学院経済学府博士後期課程修了、博士(経済学)。著書に、『プレミアムの法則』『「高く売る」戦略』(以上、同文舘出版)、『ITマーケティング戦略』『日本の携帯電話端末と国際市場』(以上、創成社)、『「高く売る」ためのマーケティングの教科書』『すごい差別化戦略』(以上、日本実業出版社)などがある。

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