また、安さを感じさせる商品ラインナップの一方で、マクドナルドはウェブサイトなどにおいて、商品クオリティや100%無添加ビーフ、素材選びへのこだわりなどをしっかり顧客に訴求しています。こうした取り組みの訴求は、高品質を謳う高級ハンバーガー店のウェブサイトと比べても、パッと見ではまったく遜色ありません。
一方でモスバーガーに関しては、マクドナルドと比べて価格帯が高いにもかかわらず、ブランド価値訴求においてマクドナルドより大きく秀でているかというと、そうともいえません。100円台の低価格商品を持ちながらも、ブランド価値訴求をどんどん強めてきているマクドナルドの戦略を前に、モスバーガーが苦戦を強いられている部分はあると思います。さらにマクドナルドは“朝マック”や“夜マック”をはじめとした、各種キャンペーンの巧みさでもモスバーガーを上回っているといえます」(三ツ井氏)
一昔前までは「モスバーガーはマクドナルドより高級」という印象を抱いていた客も多いだろうが、近年のモスバーガーは、どっちつかずの立ち位置に陥ってしまっているということか。
「モスバーガーは“安心・安全”への取り組みの一環として、協力農家の野菜を使用していますが、野菜に関しては他のバーガーチェーンも力を入れてきており、このあたりの価格帯のハンバーガーはすっかり同質化してきていて、差別化が非常に図りにくくなっているということです。
そんななか、気になる存在がバーガーキングです。最近22店舗の店舗閉店を発表した同社ではありますが、今年中には新たに20店舗の出店計画を発表しており、2020年もさらに出店を加速させていく戦略を発表しています。世界的に見れば第2位のハンバーガーチェーンですし、この先インバウンド需要が高まるに連れ、その知名度は武器になるでしょう。ビーフパティを直火焼きするなど、最近の飲食業界のトレンドといえるクラフト感(手作り感)に適応できているという強みもあります。
それにバーガーキングは、トッピングをカスタマイズできたり、お願いすればハンバーガーを半分にカットしてくれたりと、大手チェーンでは絶対にやりたがらないようなオペレーションに対応しているのも特徴。効率性を捨てることで差別化に成功しているため、中途半端に高品質志向なチェーンからすると脅威なのではないでしょうか。