クーポンも、他のハンバーガーチェーンではアプリをスマートフォンにダウンロードしないと取得できないことがありますが、バーガーキングはウェブサイトで一般公開しており、こうしたユーザーファーストの取り組みも同ブランドのファンを獲得する要素となっています」(同)
他のチェーンにとっては、マックとの住み分けが至上命題?
だが、バーガーキングが“野党第一党”の座を確保できるかというと、そう簡単な話でもないらしい。
「先述したように、バーガーキングの日本での店舗数は、今回の閉店もあり、まだ約80店舗にとどまっています。ここからマクドナルドの規模にまで増やしていくのは現実的に厳しいですし、マクドナルドを追随するというよりは、ブランドの差別化を図りマクドナルドとは異なる客層を獲得していく必要があるといえます。
ブランドの差別化という話になりますと、ロッテリアはマクドナルドよりもやや高めで、どちらかといえばモスバーガーに近い価格帯なのですが、新商品開発やキャンペーンに力を入れています。やはり300円台の商品がボリュームゾーンでありながら、700円台の限定高単価商品『ロッテリアクラシック』シリーズの投入や『肉の日キャンペーン』など、マーケティング戦略に“尖り”が見られます。これは、メディアやSNSに露出していく上では差別化のポイントになるでしょう」(同)
では、ウェンディーズとファーストキッチンの場合はどうか。ウェンディーズが2016年にファーストキッチンを買収したことで、現在は「ウェンディーズ・ファーストキッチン」というコラボレーション店舗が増加中だが、「ファーストキッチン」のブランドも存続しており、一部のメニューは両者で共通している。
「彼らはハンバーガーチェーンとしては珍しくパスタを提供しており、ハンバーガー以外の需要も取り込もうとしています。価格戦略に関しても、ウェンディーズ・ファーストキッチンのハンバーガー自体は400~600円台と他のハンバーガーチェーンよりも高価格帯に設定しているにも関わらず、パスタはさらに高い500~700円台でラインナップしており、全体の客単価をさらに引き上げようとしている戦略が見て取れます。
一方、ファーストキッチンの単独店舗は200~400円台のハンバーガーを揃えており、低価格帯をカバーしていますので、彼らからすると、2つのブランドのミックスによって業界シェアを押さえていこうという考えなのではないでしょうか。ウェンディーズの高級なブランドイメージに基づいて開発した商品を、ウェンディーズよりも大衆的なファーストキッチンで展開することで客単価を上げるという手法も取れますし、両ブランドのコラボレーション戦略には注目していきたいところです」(同)
ちなみに、マクドナルドを差し置いて日本初のハンバーガーチェーンとして誕生したのは、1970年創業のドムドムハンバーガーだ。ここが将来、業界のダークホースになる可能性はあるのだろうか。
「全盛期には400店舗以上あったドムドムハンバーガーは、今では31店舗にまで縮小しています。2017年に運営会社が変わり、ロゴや制服も刷新したのですが、2021年度3月期までの新規出店計画は19店舗。これが達成されてようやく50店舗に届く程度であり、いくら復活ムードで話題になっているとはいえ、業界シェアを高めていくのは容易ではないと思います。価格戦略もマクドナルドと被っていますし、そこでシェアを奪っていくためには、他社にはない差別化要素の付加が必要条件になるかと思います。
どこのチェーンも自社のポジションの取り方に苦労しているわけですが、それは『シェイクシャック』や『ウマミバーガー』など、平気で1000円もするような海外の人気店が次々と日本に上陸してきた事も影響しています。これにより、クオリティの高いハンバーガーとはどういうものかという概念が変わり、国内チェーンにとっては中途半端な差別化では、顧客の支持を得ることが難しくなってしまいました。
こうなると、もはや資本力と店舗数の争いですから、この先もマクドナルドの独り勝ちは続くと思われます。設備投資による既存店のリニューアルや、ブランド価値のさらなるブラッシュアップなどが進めば、マクドナルドの業界シェアはますます高まっていくのではないでしょうか」(同)
マクドナルドは「QSC(クオリティ、サービス、クレンリネス)」をビジネスの基盤とし、これを徹底的に追求することで、消費期限切れ鶏肉問題という窮地をも脱してみせた。
そんなマクドナルドが今後も“与党”として君臨する限り、他のチェーンはマクドナルドとの真っ向勝負を避け、独自の路線を切り拓いていかなければ、“野党第一党”には近づけないのかもしれない。
(文=A4studio)