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モンスターエナジー、レッドブルを駆逐しトップ独走状態の秘密…周到な販売戦略

文=あかまんぼう/A4studio
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モンスターエナジー(エナジー・ドリン君氏提供)

 2002年にアメリカで誕生した「モンスターエナジー」が、今年で20周年を迎えた。日本では12年に上陸して以降、エナジードリンクの代表格として定着。消費者購買データを取り扱うTrue Dataが発表した、全国のドラッグストアのPOSデータをもとにした買物指数によると、エナジードリンクの火付け役だった「レッドブル・エナジードリンク」を抑え、モンスターエナジーの売り上げが独走状態となっている。今や日本国内のトップシェアを獲得しているのだ。

 そこで今回は、なぜモンスターエナジーが日本で人気を博しているのかについて、“世界中のエナジードリンクがわかる日本最大エナジードリンク総合サイト”を標榜している「エナジードリンクマニア」管理人、エナジー・ドリン君氏に解説していただこう。

モンスターエナジー成功の理由はコスパの良さ

 ドリン君氏は、海外で買い集めたレッドブル、モンスターエナジー、ロックスターなどをはじめとした、5000種以上のエナジードリンクのコレクションを保有するほどで、その知見は相当なもの。そんな氏に、まずはモンスターエナジーの歴史から聞いていこう。

「モンスターエナジーは2002年にアメリカのハンセン・ナチュラルという会社から発売されました。この会社は1935年にアメリカで創業したハンセンという飲料販売の会社が始まりで、当時はジュースなどを手売りしていたそうです。子・孫と代が続いていくのですが、1988年にカリフォルニア・コパッカーズという会社に買収され、このときにハンセン・ナチュラルに社名を変更。現在はまた社名変更し、モンスター・ビバレッジとなっています。

 そして1997年にレッドブルがアメリカに上陸した際に、ハンセン・ナチュラルはハンセンエナジーというエナジードリンクを発売するのですが、これは期待していたほどエナジードリンクのシェアを獲得することはできませんでした。しかしその後いくつかのエナジードリンクブランドを立ち上げるなかで、2002年に発売したモンスターエナジーが徐々にその名を広げていくのです」(ドリン君氏)

 ハンセンエナジーがヒットしなかった理由はどこにあるのだろうか。

「ハンセンエナジーがヒットしなかったというよりも、当初もレッドブルがエナジードリンクとして確固たる地位を築いていたようです。それこそ01年に発売されたロックスターや、02年に発売されたモンスターエナジーは当時も、アメリカでは“エナジードリンク=レッドブル”というような状況でした」(同)

 では、なぜモンスターエナジーがアメリカで流行したのかが気になるところだ。

「1番の理由はサイズと値段でしょう。モンスターエナジーが発売された当時のレッドブルは、約2ドルで約8.3オンス(約245ml)。それに対してモンスターエナジーは約2ドルで16オンス(約473ml)という大容量でした。

 価格がほぼ同じ2ドルにもかかわらず、モンスターエナジーは倍近い量が楽しめる。当然カフェインやタウリンの量も倍入っているので、“どうせ買うのなら量が多いほう”という考えから、モンスターエナジーを購入する人が徐々に増えていったような印象があります。

 余談ですが、このようにエナジードリンクで量が重視される流れは、アメリカだけではありませんでした。当時コカ・コーラから発売されていたイギリスのリレントレスやオーストラリアのマザーといったエナジードリンクも、“これまでの倍の量、倍のエナジー”として売り出し始めて、徐々にシリーズを拡大していったのです」(同)

10年前の日本上陸以前からコアなファンが日本にも存在した

 では、日本での成功について聞いていこう。

「日本にモンスターエナジーが上陸した12年頃になると、アメリカ国内だけでなく世界中の印象として、“アメリカのエナジードリンクといえばモンスターエナジー”という感覚に変化していました。実際、アメリカのエナジードリンクシェアのトップ争いをする存在にまで成長していたのです。

 そのため当時アメリカに旅行や仕事で行く機会のあった日本人でも、スーパー、コンビニ、ドラッグストアなどあらゆる場所でモンスターエナジーを目にする機会が多かったと思います。また、モンスターエナジーがスポンサーをしているエクストリームスポーツ界やモータースポーツ界、世界で活躍するアスリートやアーティストなどを通じて、存在だけは知っているという人は日本にも少なくなかったでしょう。ですから日本に上陸が決まったときは、“何それ?”という人が大多数な一方で、“ついに日本にも来たか!”というような声も、一部コアなファンの間では多かった印象でしたし、私もそんなファンのひとりでした」(同)

 しかし、そのもとからあったアメリカでの認知度だけでレッドブルの牙城を切り崩したわけではなく、ほかにもトップシェアに躍り出た要因があるという。

「すでにアメリカで絶大な人気を得ていたブランド力だけが、日本での成功理由ではありません。ほかにも、怪しくどこか危険で強烈な缶デザインや、当時の日本のエナジードリンクと比べて巨大なサイズという特徴から、“ヤバいエナジードリンクが上陸した!”という雰囲気作りも見事だったと思います。そして、発売当初から全国のコンビニなどで買える手軽さや、連日街頭や学校施設などでサンプリングをするなどして、さまざまなシーンで関わる存在となっていきました。そういった地道なプロモーション活動により、着実に選ばれるエナジードリンクになっていたと考えられます」(同)

 そのようなブランディングが功を奏したわけだが、もちろんビッグサイズでコスパが良いという特徴も、日本での成功の理由だったそうだ。

「まずは12年当時の日本での販売サイズをご説明します。日本ではレッドブルが185mlで190円(税別)なのに対して、モンスターエナジーは355mlで190円(税別)でした。倍に近い量が入っているにもかかわらず値段が安いわけですから、若者を中心に人気があるエナジードリンクなら購買欲が掻き立てられるのは当然といえるでしょう。20年前アメリカでモンスターエナジーが登場したときと同じ状況が日本でも起きていたわけです」(同)

 ドリン君氏は「フレーバーの種類の豊富さも日本でのヒットの大きな要因」だと続ける。

「さらにファンを増やした秘訣が、フレーバーの種類の豊富さと美味しさでしょう。モンスターエナジーは22年3月末までに14種類(販売終了・自販機限定含む)ものフレーバーを発売しています。上陸から10年間、コンスタントに新作を発売し、そのなかでもパイプラインパンチは売れすぎて製造が追いつかなくなるほど人気商品となりました。この10年で大容量のコスパの良さと豊富なフレーバー展開により、圧倒的なブランド力を日本でも築き上げたと考えています」(同)

今後もモンスターエナジーの独走は続くのか?

 日本でのモンスターエナジー人気は今後も続いていくのだろうか。

「モンスターエナジーの人気は、さらに加速していくと思います。モンスターエナジーは種類が多いにもかかわらず、コンビニではほとんどのフレーバーが取り揃えられていますから、コンビニの限られた陳列スペースにおける占有率が非常に高いわけです。上陸から10年で確固たる地位を築き、当初からブレることのないブランドイメージが日本でも完全に定着しているといえるでしょう。

 Twitterでは新作が出るたびにツイートキャンペーンが行われるのですが、その数は数千、数万件にのぼるほか、“新作買った”というようなツイートを目にすることもとても多いです。SNSの反応は非常に大きく、エナジードリンクのなかでも特に人気の高さが伺えますね」(同)

 最後にエナジードリンクの市場変化についても聞いた。

「そもそもエナジードリンクのあり方がここ10年で変化しているんです。モンスターエナジーが日本に上陸した頃は、栄養ドリンクの代用品とイメージする人が多かったのではないでしょうか。実際に日本のメーカーが発売したエナジードリンクのほとんどが、栄養ドリンクのようなキャッチコピーやプロモーションを行っていました。しかし、そういった打ち出し方は、今はもうほとんど行われていません。要するに、当時はメーカーも消費者もエナジードリンクという新しいカテゴリーのドリンクが、どんなものかまだわからなかったのだと思います。

 けれど最近では、気合を入れたいときや頑張りたいときはもちろん、ジュースの延長線上のようなイメージで飲むようになった人も増えたのではないでしょうか。これまでモンスターエナジーやレッドブルが続けてきたブランディング施策により、アートシーンやカルチャーシーンにも浸透し、さらにスポーツシーンではオリンピックメダリストとともに、エナジードリンクブランドを目にすることが多くなったと思いませんか?

 栄養ドリンクの存在や印象が根強い日本でも昔からのコアなファンからはじまり、10代、20代の若者を中心にエナジードリンクがファッションやライフスタイルの一部として、日本でも浸透してきたのではないかと感じています」(同)

 4月12日には新作フレーバーであるマンゴーロコ(税込205円)が発売されているが、ドリン君氏によると「19年の発売直後に完売・一時生産中止となったパイプラインパンチ(税込205円)に並ぶほど、世界で支持されているフレーバーなので日本でも間違いなく人気になる」とのこと。気になる人はぜひ試してみてほしい。

(文=あかまんぼう/A4studio)

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A4studio

エーヨンスタジオ/WEB媒体(ニュースサイト)、雑誌媒体(週刊誌)を中心に、時事系、サブカル系、ビジネス系などのトピックの企画・編集・執筆を行う編集プロダクション。
株式会社A4studio

Twitter:@a4studio_tokyo

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