大塚製薬が運営する「ポカリスエット」公式サイトのFAQページの内容が話題になっている。その内容は、「ポカリスエットを水で薄めてもいいか」という質問に対し「水で薄めてしまうと、水分とイオン(電解質)のスムーズな吸収が損なわれてしまうのでおすすめしておりません」というものである。大塚製薬の回答の通り、ポカリスエットなどのスポーツドリンクは、水で薄めると吸収されにくくなる。
多量の汗をかくと、体液中に含まれるナトリウムやカリウムなどの電解質も汗とともに失われ、本来、体が持っている調整機能が破綻し、熱中症になる恐れがある。熱中症が進むと体温上昇、めまい、倦怠感、けいれん、意識障害などを起こし、さらに悪化すると死を招く危険もある。
熱中症予防には、こまめな水分補給が重要だが、熱中症が疑われる時には真水では失った電解質を補うことができず、電解質を含むスポーツドリンクなどが適している。話題になっている「ポカリスエットを水で薄めてはいけない」というのは、水で薄めることによって電解質が少なくなり吸収率が低下し、効率良い水分補給ができなくなるからだ。
しかしながらスポーツドリンクは糖分も多く含んでいるため、飲み過ぎには注意が必要だ。実は、熱中症や病的脱水時には、スポーツドリンクよりも経口補水液が適しているといえる。
スポーツドリンクと経口補水液の違い
大塚製薬といえば、経口補水液「OS-1」を製造販売していることでも知られているが、OS-1の製品ページでは、スポーツドリンクとの比較について触れている。下の表はOS-1のページから抜粋したものであるが、ナトリウム、カリウム、クロールといった電解質についてスポーツドリンクよりも経口補水液のほうが高いことがわかる。一方の糖(ブドウ糖)については、スポーツドリンクのほうが約2~4倍近く高い。スポーツドリンクの糖分が高いのは、運動によって消費された筋肉のグリコーゲンを回復するためなどの目的がある。水分補給にも目的にあった水分補給をすることが大切である。
ポカリスエットとエナジードリンクを混ぜると鬱になる?
「ポカリスエットとエナジードリンクを混ぜて飲んでいたら不眠症になり、鬱になった」というツイートが、インターネット上で話題になっている。医学的に、どのような理由が考えられるのかを、麹町皮ふ科形成外科クリニック院長・苅部淳医師に聞いた。
「ポカリスエットは医学的には点滴と似たような成分であり、体内へ素早く吸収されます。ポカリスエットとエナジードリンクを混ぜると、エナジードリンク内に入っているカフェインやアルギニンなどの神経を興奮させる成分が即座に体内に吸収されてしまうと考えられます」
また、ポカリスエットとエナジードリンクともに含まれる糖分にも問題があるという。
「エナジードリンクは糖分も非常に多く、脳内の快楽中枢が麻痺するため、中毒症状が出やすく、さらに求めるようになります。しかし、飲んだ後には気分が沈み、鬱症状に似た気分になることがあります。ポカリスエットも脱水時には非常に効果的な飲料ですが、普段から飲んでいると糖分の過剰摂取になります。医学的には混ぜて飲むことはお勧めしません。十分注意してください」
糖分の取りすぎには十分注意し、効率の良い水分補給を心がけて、暑い夏を乗り切ってほしい。
(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)