安倍首相、病状が深刻な可能性…2週連続での慶応大病院受診が意味すること 医師の見解
安倍晋三首相は8月24日、慶応大病院を再び訪れた。先週17日に続き、2週連続での訪問である。先週受けた検査の結果を聞きに行ったのだろうという憶測もあるようだが、その可能性は低いのではないかと思う。
なぜかといえば、検査結果を説明するだけなら、検査データをメモリーやノートパソコンに保存して主治医が安倍首相の元に赴けばいいだけの話だからだ。先週安倍首相が慶応大病院に約7時間半滞在したことで、体調不安説が広がって大騒ぎになり、退陣説まで流れたほどなので、国のトップとして求心力の低下を恐れるのであれば、2週続けて受診することは、できれば避けたかったはずである。
にもかかからず、安倍首相本人が2週続けて慶応大病院に行ったのは、背に腹はかえられぬ事情があったからではないか。おそらく病院に備え付けの機器がなければできない検査あるいは処置を受ける必要があり、なりふりかまっていられなかったのだろう。
私が注目するのは、安倍首相が吐血したとか、吐瀉物の中に鮮血あるいは黒い塊が混じっていたとかいう情報が流れたことである。一連の報道が事実とすれば、消化管のどこかの部位から出血している可能性も考えられる。
安倍首相の持病である潰瘍性大腸炎のせいで出血することもあるのだが、その場合は下血という症状になる。吐血したり、吐瀉物の中に血が混じったりするのは、胃・十二指腸より上の上部消化管からの出血による。
上部消化管出血の原因として多いのは、潰瘍あるいは腫瘍である。潰瘍性大腸炎が悪化すると、ステロイド剤の使用が必要になることもあるのだが、その副作用として潰瘍ができ、そこから出血することは十分考えられる。
あるいは、腫瘍の可能性も否定できない。その可能性がある場合、内視鏡検査によって病変部の組織を採取し、良性か悪性かを判断する細胞診を行う。悪性腫瘍は、一般にガンと呼ばれる。もしかしたら、先週の検査で採取した組織に悪性の可能性がないわけではなかったので、確定診断のために再度病変部の組織を採取する、あるいは広がりや浸潤の度合いを調べる必要があったのかもしれない。
もう1つの可能性として考えられるのは、肝臓、胆のう、膵臓の病変である。父親の安倍晋太郎氏が膵臓ガンで亡くなっていることもあって、先週「亡父・晋太郎と同じ膵臓ガンだった」という噂が与野党議員の間で飛び交ったそうだ。
もちろん憶測の域を出ないが、主治医は当然その可能性も視野に入れて検査を実施するはずだ。先週画像検査を行ったところ、影のようなものが写っていたので、今週病変部の組織を採取することが必要になったのかもしれない。
安倍首相の後継候補は固唾をのんで見守っているかもしれない
安倍首相からも慶応大病院からも正式な発表がない以上、病状については推測するしかない。くわしい状況が不明だからこそ、真偽不明の噂がいろいろ流れるのだろうが、こういう場合だいたい悪いほうに解釈するのが世の常である。
以前、某企業の診療所で週1回診察を担当していた時、そこの看護師から興味深い話を聞いた。誰かが検診で引っかかって再検査のためとか、ちょっと調子が悪くて薬をもらうためとかで診療所を受診しただけで、他の社員が病状を聞きにやってきたという。
しかも、だいたい悪い可能性を想像して、根掘り葉掘り聞くのだとか。たとえば、胃のバリウム検査を受けて引っかかった社員が内視鏡検査を受けることになったら、別の社員が「あの人は胃ガンではないのか」と聞きにきた。また、風邪をこじらせて咳が止まらない社員が、念のために胸部レントゲンを撮ることになったら、別の社員が「あの人は肺ガンではないのか」と聞きにきた。
もちろん、看護師は「守秘義務があるので、お答えできません」と断ったようだが、「みんな悪いように悪いように解釈するんですけど、だいたいただの胃炎か風邪ですよ」とあきれていた。おそらく、ある社員が重篤な病気で療養を余儀なくされ、最悪の場合死亡すると、そのポジションに自分が座れるのではないかと期待するのだろう。
企業でさえこうなのだから、一国の首相の健康不安説が流れると、色めき立つ政治家がいても不思議ではない。とくに安倍首相の後継者と目される自民党議員は、固唾をのんで見守っているかもしれない。また、マスコミも、第一次政権時の2007年に潰瘍性大腸炎の悪化によって退陣した時と同じことが起きるのではないかと注視しているのだろう。
私は、まったく関係ない立場で、純粋に医学的見地から申し上げている。安倍首相の体調悪化が、悪性腫瘍によるものではなく、潰瘍性大腸炎の悪化か治療薬の副作用、あるいは単にストレスと過労によるものであれば、しばらく休養することによって改善するだろう。