現代のアメリカでは、アレルギー、喘息、自閉症、多動、注意散漫、学習障害、不安などを抱える子供たちが増えている。アメリカの子供たち3200万人の実に43%が、肥満を除いた20の慢性疾患のうち、少なくともひとつで苦しんでいる。それは親の世代と比較して4倍以上である。祖父母の世代では子供の頃に薬など飲んだことがないのが当たり前だったが、状況は年々悪化してきている。今や、5歳未満の子供で100万人以上、17歳未満の子供で830万人以上が精神科の薬を、毎月4人に1人がなんらかの処方薬を摂取している。
現代の子供たちが病気がちな理由として、食事の質や運動、睡眠を含めた生活習慣をはじめ、大気汚染、パソコンや携帯電話などによる電磁波、騒音、有害化学物質への曝露、さらには家庭環境や性格・嗜好・性癖など、さまざまなことが考えられる。だが、6歳までに14種を50回、18歳までに16種を69回接種してきたワクチンにもその原因があるのではないか。そう考える人々も徐々に増えつつある。
実際のところ、ワクチンの接種により、特定の病気を予防する以前に、副作用に苦しむ人々も目立つようになってきた。たとえば、子宮頸がんワクチンによる副作用は、日本でもニュースで取り上げられるほど問題となり、接種の必要性自体が疑問視されている。
だが、公衆衛生当局者らは、時に副作用が生じることは認めつつも、各種ワクチンは安全で効果的であるとの姿勢を崩していない。
そんななか、学者が出版物を通じて発表するケースとしては初めてのことであるが、注目すべき調査報告が去る4月24日、オンライン科学誌「Journal of Translational Science」上でなされた。米ミシシッピ州ジャクソン州立大学公衆衛生学部疫学及び生物統計学科の教授アンソニー・R・モーソン博士らは、ワクチン接種者と非接種者の健康度を比較調査したのだ。対象となったのは、フロリダ、ルイジアナ、ミシシッピ、オレゴンの4州の6歳から12歳の子供たちで、ワクチン非接種者261人とワクチン接種者405人の計666人だった。なお、家庭環境が子供たちの健康に与える影響を減らすべく、既婚40歳前後の母親を持つ白人中流家庭が中心に選ばれた。
ワクチン非接種者のほうが健康的?
さて、その調査結果の一部を紹介しておこう。以下は、ワクチン接種者が非接種者と比較して、どれだけ多く特定の病気に罹り、治療を受けたのかを示したものである。差が現れなかった病気については記していない。
・自閉スペクトラム症4.2倍
・アレルギー性鼻炎30倍
・アレルギー3.9倍
・抗アレルギー薬の処方22倍
・学習症5.2倍
・ADHD(注意欠如・多動症)4.2倍
・耳感染4.0倍
・耳への廃液チューブ挿入手術8倍
・湿疹2.9倍
・発熱治療4.6倍
・神経発達症3.7倍
・各種慢性病2.4倍
すでに触れたように、ヒトの健康にはさまざまな要素が関係してくるため、これらの数字を簡単に評価することは難しい。しかし、それにしても、ことごとくワクチン接種者のほうが悪い数字が出たことに対し、多くのアメリカ人は複雑な気持ちを抱いたようである。
では、特定の病気を予防するためのワクチンが実際にどれだけその病気に対して有効なのだろうか。
安心できる結果といえるかもしれないが、調査によると、ワクチン接種者は水痘(水疱瘡)で71%、百日咳で75%、風疹で87%、非接種者よりも罹患率が少ない数字となっていた。
だが、例えば生後15カ月未満になされる小児用肺炎球菌ワクチンに関しては、非接種者よりも接種者のほうが5.3倍多く肺炎球菌感染症に罹っており、ワクチン接種の意義が疑わしいこともみえてきた。
ところで、近年急速に増えつつある病気として、自閉症がある。1980年代には1万人に1人の確率で見られたが、90年代初旬では2500人に1人、12年では88人に1人、今日では68人に1人となっている。98年に新三種混合ワクチンの接種と自閉症との間に関連性があるとした医学論文が発表され、その後しばらく業界を揺るがしたが、のちに論文の不備が指摘され、無関係とされたことがあった。だが、今回の調査によると、自閉症は、ワクチン接種者のほうがワクチン非接種者よりも4.2倍罹りやすかった。論文の執筆者はデータのみを公表し、見解を示してはいないが、これは新三種混合ワクチンとは無関係としても、他のワクチンとの関連性には余地を残す結果であったといえるかもしれない。
ワクチン添加成分に問題あり?
そもそもワクチンとは、病原体からつくられた無毒化あるいは弱毒化された抗原を体内に投与し、抗体の産生を促して感染症に対する免疫を獲得させるものである。無毒化・弱毒化の方法次第でリスクに幅が出ると思われるが、そのメカニズム自体にはそれほど問題はないだろう。
基本、問題視されるのは、ワクチン自体に添加される物質のほうである。というのも、ワクチンには保存料として有害な水銀化合物のチメロサールや、ワクチンの効果を強めるためにやはり有害な塩化アルミニウムや水酸化アルミニウムが含まれる傾向があるからである。また、ヒトの中絶胎児の細胞から取り出したDNAや動物のDNA、レトロウィルスなど、健康への影響度がまだ十分に検証されていないものが使用されることもある。
さらに難しい問題がある。最も基本的なことだが、免疫力・代謝能力には個人差があり、有害と思われても、まったく問題が現れないこともあれば、敏感に現れてしまうこともある。昔からワクチン接種においては、副作用を体験する少数派は常に存在してきた。多くの人々に安心を与え、大多数の健康人には無縁であったことから、少数の犠牲は致し方ないという面もあっただろう。
だが、今や状況が異なる。生まれた時点で、子供たちの間にはかつて以上に免疫力・代謝能力に差が現れているのである。もはや誰もが一律にワクチンを接種することで大多数の人々が救われる時代ではなくなった。
ワクチン接種者は、非接種者と比較して2.4倍抗生物質を処方されており、余計に医療機関で治療を受けていることも明らかとなった。つまり、ワクチンの接種が健康面で悪循環を生み出している可能性が考えられる。
確かに一部の感染症はワクチンで抑えられる傾向はあるが、それ以外のリスクを抱え込むこともある。子供は自分自身でワクチン接種の意義を判断できない。結果として、親にその判断は委ねられることになるが、自信をもって決断できる親はいったいどれだけいるだろうか。
(文=水守 啓/サイエンスライター)