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誤解だらけの「免疫力&ビタミンD」…健康的な紫外線の浴び方とは?皮膚科医が解説

文=ますだポム子/清談社
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「gettyimages」より

 新型コロナウイルスの流行により“免疫力”に対する関心が強まっている。食事、睡眠、入浴法など、免疫力を高める方法が多くのメディアで取り上げられている中、注目を集めているのが「ビタミンD」だ。

 ビタミンDは日光を浴びることで生成され、免疫力アップの効果が期待できるという報道も多いが、ひふのクリニック人形町の上出良一院長は「その情報は正確ではありません」と言う。

ビタミンDは多すぎても少なすぎてもNG

「紫外線を浴びることでビタミンDがつくられるのは事実です。しかし、ビタミンDを多く摂れば免疫力が上がるかというと、そうではありません。『体内のビタミンD量が必要量以下に欠乏すると、さまざまな病気につながる』という言い方が正しいのです」(上出氏)

 では、ビタミンDが不足すると、どのような疾患につながるのだろうか。

「骨の形成が抑制されるので、年配の人は骨折や転倒のリスクが、乳幼児は『くる病』のリスクが上がります。また、ビタミンDの不足が直接的な原因かどうかは十分に検討されていませんが、疼痛、悪性腫瘍、心血管系など全身に影響を及ぼす可能性があるとも言われています」(同)

 こうした疾患のリスクを上げないためにも、体内のビタミンD量が足りている状態を保つことが肝要だという。

「ビタミンDは不足している状態も危険ですが、過剰に摂取しすぎるのも禁物です。ビタミンDを摂りすぎると、『ビタミンD過剰症』といって、高カルシウム血症が起こることもあるのです」(同)

 高カルシウム血症は、軽度であれば、吐き気、嘔吐、腹痛、食欲不振といった症状で済むが、重度になると、錯乱、情動障害、せん妄、幻覚、昏睡を伴う脳の障害を引き起こす。

 とはいえ、紫外線を浴びることでつくられるビタミンDの量には限度があり、限界量まで生成されると、それ以上はどれだけ浴びても頭打ちになってしまうという。それなら、紫外線の浴びすぎは気にしなくてもいいのではないだろうか。

「そうでもありません。紫外線の浴びすぎは皮膚トラブルを引き起こすことがあるため、非常に危険です。紫外線を過剰に浴びると肌の光老化が進み、シミやシワができます。さらに、皮膚がんの発生を抑えられなくなるので、百害あって一利のみなのです」(同)

 紫外線は当たりすぎても当たらなさすぎても、人体に重大な影響を与える可能性があるわけだ。

「今は、『日光浴をすれば免疫力が上がる!』と信じて紫外線を浴びすぎている人と、日焼け止めや日傘などで防御しすぎている人と、極端に二分しています。体内、体外、どちらの健康のためにも、紫外線とは“ほどほど”に付き合っていくのが望ましいですね」(同)

地域ごとに違う「UVインデックス」とは

 では、“ほどほど”とは、どの程度を指すのだろうか。まず注目すべきなのが、「UVインデックス」という紫外線の強さを指標化した数値だ。

「UVインデックスは数字が小さいほど紫外線が弱く、大きいほど強くなります。たとえば、UVインデックスが3の地域と10の地域で、それぞれ20分ずつ屋外にいたとすると、肌が受けるダメージは10の地域の方が大きいということになります」(同)

 地域ごとのUVインデックスは気象庁のホームページで確認できる。その数値によって紫外線を防御する度合いも変わるため、体内のビタミンD量を過不足がない状態にするためには、チェックが欠かせない。

「人が1日に必要なビタミンDの量は、およそ10マイクログラムと言われています。この量を紫外線だけで生成しようとした場合、UVインデックスが3の地域だと、肌の露出面積が約600平方センチメートルで、3時間ちょっと紫外線を浴びるといいことになります。UVインデックス3というのは、冬の北海道くらいですね。一方、東京都心の夏は8くらいで、その場合は同面積で25分程度で十分だと言われています」(同)

 とはいえ、これは“紫外線のみ”でビタミンDを充足させようと思ったときの必要時間だ。日常生活の中では食事でもビタミンDを摂り入れているため、紫外線を浴びすぎると、ビタミンDを過剰に摂取してしまうことになる。

「ビタミンDは、発酵食品、きのこ類、魚などから経口摂取できます。栄養バランスの良い食事を心がければ、食事からでもそれなりの量が摂取できるはずです。それを踏まえると、紫外線を浴びる時間は思っているよりも短くていいことになります」(同)

急に強い紫外線を浴びると「光線過敏症」に

 地域によって異なるUVインデックスの数値や日々の食事内容も加味すると、1日に浴びるべき紫外線の適正量はわかりにくい。適正量を算出する方法はあるのだろうか。

「あまり難しく考える必要はありません。細かく量や時間を定めても実践が大変ですし、浴びすぎず、防御しすぎない“普段通り”を心がけるといいでしょう。肌の露出面積が約600平方センチメートルというとA4判くらいの大きさで、両手の甲と顔の面積に相当します。都心でUVインデックスが8だとすると、25分ほど両手の甲と顔が日光を浴びればOK。いつも通りに通勤するだけで十分というわけです。日焼け止めを塗っていたとしても、安心して浴びすぎないように注意してください」(同)

 UVインデックスが高いときは長袖を着て浴びすぎを防いだり、反対に数値が低いときは半袖を着て紫外線を浴びられる面積を増やしたりするなど、露出部の調整をすれば十分だという。特に今夏は感染症対策のため、屋外でもマスクを着用する時間が長い。顔以外の露出部をうまく増やし、調節することが重要だ。

 さらに、この夏はコロナ対策が重大な肌トラブルを招く恐れもあるという。特に、紫外線を長時間浴びない自粛生活を送っていた人は要注意だ。

「長い期間、紫外線を避けたステイホーム生活を送ってきた人の肌は、日光に対して過敏に反応する状態になっています。紫外線耐性が落ちている状態で強い日差しを受けると、肌が急激に真っ赤になったり、炎症やかゆみが出る『光線過敏症』を起こしたりします。こうしたトラブルを防ぐためにも、特に今年は必要以上に日光を浴びるのは避けたほうが安全です」(同)

 コロナ感染が再拡大する中、今後も在宅時間は増えることが予想される。ウィズコロナ生活での適切な紫外線の浴び方を、上出氏に教えてもらった。

「早朝や夕方などの紫外線量が比較的少ない時間帯に散歩や買い物に出たり、ベランダに出て外の空気を吸う時間をつくったりすることで、適度に紫外線を浴びられると思います。10~14時は1日で最も紫外線が強いため、避けたほうがいいですが、あえてこの時間帯に数分だけ紫外線を浴びるというのも、ビタミンD不足の予防には向いているかもしれません」(同)

 こうした紫外線との付き合い方は、夜勤でなかなか日光を浴びられない人にもおすすめだ。いずれにしろ、紫外線は人体にとって諸刃の剣のような性質を持っている。適度な量を浴びることを心がけたい。

(文=ますだポム子/清談社)

清談社

清談社

せいだんしゃ/紙媒体、WEBメディアの企画、編集、原稿執筆などを手がける編集プロダクション。特徴はオフィスに猫が4匹いること。
株式会社清談社

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