古田氏は高級官僚として超エリートコースを歩んできた。地元の県立岐阜高校をトップの成績で卒業後に東京大学法学部に進学。通産省(現経産省)に入省後は、官僚の中の官僚を養成するといわれる超難関のフランス国立行政学院(ENA)に留学。さらにジェトロでニューヨーク駐在の産業調査員、羽田孜、村山富市両内閣では首相秘書官も歴任、経産省から外務省に出向して経済協力局長を最後に退官した。その後は、2005年に岐阜県知事に就任し、13年2月には3選を果たしている。
悪評の内容は、「2期8年の間にまったく何も成果が残せておらず、やったのは昨年開催した『ぎふ清流国体』くらい」(県庁中堅幹部)といった政治手腕のなさが中心。国体開催についても、順番で開催が回ってくるもので知事の力量とはまったく関係なく、いまや地方行政にとっては財政負担ばかりが目立つ、お荷物的な存在との見方もある。
県庁内からは「自分で考えた政策がないうえに有能な職員を使いこなすマネジメント能力もまったくない。そればかりか、ご注進するとうるさがって、意見具申した側近を左遷したこともあるので、誰もご注進しなくなり、いまや『裸の王様』状態」との声も漏れてくる。
岐阜県内の企業経営者もこう話す。
「前知事の梶原拓さんは強烈なリーダーシップで自分の政策を推し進めたために、それが強引に映る場面もありましたし、箱モノ行政を進めた結果、起債も増えましたが、岐阜県の食料自給率向上政策など他県が取り組まないようなユニークでかつ長期的には必要な政策を打ち出していました。一方で今の古田さんはまったくと言っていいほど何もやっていません。これでは給料泥棒です。それでも3選できたのは、田舎で保守的な岐阜県では、何もやっていないことが堅実と映ったのかもしれません」
トヨタの研修施設竣工式の挨拶で赤っ恥
古田氏は県庁内外で自分の華麗な経歴の自慢話をすることも、嫌われている大きな要因だ。地元のマスコミ関係者が、こんな指摘もする。
「今年7月、トヨタ自動車が約100億円を投じて岐阜県多治見市に、国内や海外の販売店で修理などの対応をするサービススタッフの研修拠点を新設しました。地元ではテストコース付きの大きな施設であることが話題になりましたが、トヨタの真の狙いは『グローバルな販売拠点の人材育成』に主眼が置かれていました。竣工式に出席した地元出身の古屋圭司国務大臣や古川雅典多治見市長は、その趣旨を理解して人材育成の大切さを訴え、参列者が感心する挨拶をしましたが、古田知事の挨拶は日米自動車協議に通産省時代に関わった話など自分のキャリアの自慢話が中心なうえ、テストコースの話ばかりを強調するので周囲から失笑を買っていました。しかもメモを見ながらの挨拶が非常に下手だったので、東京から取材に来ていた記者連中からは『あれは課長の代読か?』との声も出ていました」
要は古田知事とは、能力に関係なく肩書だけで生きてきた人物なのである。実績主義が徹底される企業社会の中では淘汰され始めている「絶滅種」のような存在なのだが、地方自治の人材不足と相まって3期も知事が務められているのだ。
古田知事と同様に評判が悪いのが、同じく通産省出身で特許庁長官や内閣広報官まで務めた福岡県知事の小川洋氏(64)である。小川氏は京都大法学部卒。時代遅れの重厚長大型産業の誘致に力を入れ、時代に合った新しい政策をまったく打ち出せず、職員を使いこなす能力にも、欠けているといわれる。前任者の政策を無為無策に引き継いでいるだけなのである。
小川氏の場合は、福岡市長の高島宗一郎氏(38)と対比され、「県知事は市長に比べて何もしてない」との批判が地元から出ている。獨協大卒の高島氏は民放アナウンサー出身で軽さが残るものの、福岡の名物である「屋台」の維持存続のために「屋台課」を設置、総務省から出向してきたキャリアを課長に起用したり、駅や空港など主要施設には無料のWi-Fiを整備したり、仮想行政区「カワイイ区」を新設したりと、新しい政策を打ち出し、それを実行に結びつけている。
地方分権の重要性が叫ばれているが、キャリアだけご立派な知事がいるだけでは「分権」されても何も主体的に動けないであろう。
(文=編集部)