官僚による「基金」を使った天下り先へのミルク補給は目に余るものがある。3月中旬の予算委員会で疑惑が取り上げられた、東日本大震災の被災地の雇用創出事業に関わる「津波・原子力災害地域雇用創出企業立地補助金」はその典型であろう。財源は復興特別税で、2013・14年度予算で計1730億円が「基金」として計上されている。
この「基金」の管理業務を請け負っているのは一般財団法人・地域デザインオフィスという経産省の親密先。経産省は入札で同社に委託したものの、実際は同社に落札させるために経産省があの手この手の配慮を行ったことが明らかになっている。
そもそも同社は入札直前まで事務所がないペーパーカンパニーで、定款には「基金管理事業」がなかった。このため入札直前になって慌てて定款変更し、落札後に事務所を借りたのが実態だった。国会では担当大臣および担当審議官は「落札までに新たに事務所を借りるということで認めた」と答弁している。
●今後も巨額基金の造成を予定
同様の事例は厚生労働省にもみられる。同省は、身内の天下り先である高齢・障害・求職者雇用支援機構に短期集中特別訓練事業を受託させるために入札条件を変更しただけでなく、入札公示の前日に厚労省の担当企画官が同機構を訪問していたことも判明している。どういうやりとりが行われたかは判然としないが、官製談合が疑われても致し方ない行為といわざるを得ない。
同機構には厚労省や経産省の官僚が多数天下りしているが、同時に09年度以降、9950億円の予算が「基金」として投入され、昨年末時点で2266億円もの余剰金が出ている。
身内の天下り法人に事業を受託させ、「基金」を造成して予算を流し込む構図である。しかもこれから造成予定の「基金」は98基金・2兆6400億円に上るというから驚きだ。
基金には、「取り崩し型」「回転型」「保有型」「運用型」の4種類があるが、いずれも明確な根拠法があるわけではなく、予算措置をもって後付けで適法とされている。裏を返せば、それだけ自由度の高い仕組みということになるが、財源が国民の税金である以上、やはり「基金法」(仮称)といった法整備を行い、透明性を高める必要があろう。
(文=森岡英樹/金融ジャーナリスト)