イタリア産の生ハムやサラミが日本で食べられなくなる――。イタリアンが好きな日本人には悲報だが、現実となる日が迫ってきている。感染力が強い家畜伝染病「アフリカ豚熱」がイタリアで発生したことを受け、政府は生ハムをはじめとした同国産加工肉などの輸入を全面的に禁止したためだ。輸入再開のめどは立っていない。
サイゼ、メニュー見直し
アフリカ豚熱は日本でまん延している「豚熱」よりも感染力がはるかに強く、かかった豚の致死率は100%とされる。欧州などで流行している。国内でウイルスが拡散されれば、養豚業が崩壊するリスクがある。養豚農家を家畜伝染病から守るためにも、政府はアフリカ豚熱が発生した国で製造された豚肉の加工品などの輸入を止める措置を講じている。
イタリアでアフリカ豚熱の発生が確認されたのは今年1月。フランスに隣接するピエモンテ州で感染した野生イノシシが見つかった。日本国内で現在流通しているイタリアの生ハム「プロシュート」などは、アフリカ豚熱が発生する前に入荷したもの。ただ、在庫が減っているため、高級スーパーの売り場には定番のスペイン産「ハモン・セラーノ」のほか、あまり馴染みがないフランス産の生ハムが増えつつある。
レストランも対応を迫られている。大手外食チェーン・サイゼリヤは「熟成ミラノサラミ」の販売を終了した。プロシュートも在庫がなくなり次第、メニューから姿を消す。同社はプロシュートの特徴について、ホームページで以下のように説明している。
<サイゼリヤのプロシュートは、パルマハム協会の厳しい審査を通った本場本物の「パルマハム」(王冠印が本物の証です!)
パルマ地方でチーズの副産物「ホエー」を食べて育った肉質の細やかなパルマ豚のもも肉を使用し、塩漬けから熟成まで熟練した職人が細心の注意を払って約1年熟成した最高級品です。
サイゼリヤではおいしさを損なわないように、塊のままのハムを日本に運び、自社工場で毎日必要分だけスライスしてお店に配送。お店では切り立ての新鮮な香りと味わいを愉しんでいただけます>
国産品などへの切り替えも検討しているが、乾燥しているイタリアとは異なり、日本は湿気が多く生ハム作りには向かない風土のため国産化は容易ではなさそうだ。
生ハム7割がイタリア産
イタリア産の生ハムなど豚加工品の輸入量(2020年)は3144トン。特に生ハムは総輸入量のうちイタリア産は7割を占めている。新型コロナウイルス感染拡大の勢いが若干収まりつつあり、外食産業が反転攻勢に打って出ようとしていた矢先にイタリア産生ハムが扱えなくなることは大きな誤算。アフリカ豚熱は一度発生すると感染拡大を抑え込むことが難しいことから、「数年単位」(業界関係者)でイタリア産が入荷できない見込み。
今後、代替品の争奪戦となることも予想され、商品の値上げも避けられそうにない。原油高やロシアによるウクライナ侵略による食料品の値上げが続く中、消費者と外食産業の懐は厳しくなるばかり。負の連鎖はなかなか止まりそうにない。
(文=Business Journal編集部)