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ウクライナ侵略+異常気象、日本を食料価格高騰が直撃…食料自給率の低さ、改善急務

文=小倉正行/フリーライター
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日本の食卓(「gettyimages」より)

 ロシアによるウクライナ侵略によって、小麦をはじめとする農産物価格の高騰が世界に広がっている。「2月中旬に2021年までの5年平均を49%上回っていた小麦価格は、2月24日のロシアのウクライナ侵攻開始からさらに30%上昇している」(3月22日付日本経済新聞より)とされ、さらに「ロシアとウクライナはそれぞれ世界1位と5位の小麦輸出国で、合計で世界の年間販売量の29%を占める」(同)だけに事態は深刻である。

 問題はそれだけにとどまらない。ウクライナのトウモロコシも世界生産量の13%を占め、油料種子でもあるヒマワリ生産量でも世界的な位置を占めている。また、ロシアは肥料の原料であるカリウム生産で世界シェアの20%を占めているが、3月4日に肥料の輸出を一時的に停止することを決めた。

 ウクライナ侵攻は世界の食料問題を危機的なものにするとともに、食料自給率37%の日本を直撃している。肥料供給が滞れば、北米の小麦や大豆、菜種生産に大きな影響が出ることになり、ウクライナの小麦に依拠しているアフリカ、中東諸国は、代替の小麦を米国産などに求めることにより、小麦需給の世界的な逼迫と価格高騰をもたらす。

食料安全保障の危機

 加えて、昨年来から地球温暖化による異常気象が続いている。昨年の北米の熱波は、米国、カナダの小麦生産、菜種生産、大豆生産に深刻な打撃を与え、現在の日本のパンや小麦粉など小麦製品や食用油、マヨネーズなどの一斉値上げの原因となった。この熱波は、過去1200年で最悪のものであったが、今年に入ってもカリフォルニア州デスバレーでは2月11日に34.4℃まで上がり、1月のロサンゼルス市の雨量は観測史上2番目に少ないなど、異常気象は継続している。

 地球温暖化が進行している以上、このような異常気象は今後も世界的に継続する。昨年のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)6次報告書でも次のように予想されている。

「向こう数十年の間に二酸化炭素およびその他の温室効果ガスの排出が大幅に減少しない限り、21世紀中に気温上昇は1.5℃および2℃を超える」

「最も暑い日の気温が最も上昇するのは一部の中緯度帯、半乾燥地域および南米モンスーン地域で、地球温暖化の約1.5〜2倍の速度になる」

「熱波と干ばつの同時発生、火災の発生しやすい気象条件(高温、乾燥、強風)、複合的な洪水(極端な降雨や河川氾濫と高潮の組み合わせ)」

 このような異常気象が米国、カナダ、オーストラリア、ブラジルなどで発生し、小麦や大豆や菜種、トウモロコシ生産に打撃を与えることが今年も引き起こされるなら、それらの国の農産物に食料を依拠している日本は、食料価格の高騰にとどまらず、食料安全保障の危機を迎えることになる。食料自給率引き上げに向けた本格的な取り組みが必要である。

小倉正行/フリーライター

小倉正行/フリーライター

1976 年、京都大学法学部卒、日本農業市場学会、日本科学者会議、各会員。国会議員秘書を経て現在フリーライター。食べ物通信編集顧問。農政ジャーナリストの会会員。
主な著書に、「よくわかる食品衛生法・WTO 協定・コーデックス食品規格一問一答」「輸入大国日本 変貌する食品検疫」「イラスト版これでわかる輸入食品の話」「これでわかる TPP 問題一問一答」(以上、合同出版)、「多角分析 食料輸入大国ニッポンの落とし穴」「放射能汚染から TPP までー食の安全はこう守る」(以上、新日本出版)、「輸入食品の真実 別冊宝島」「TPP は国を滅ぼす」(以上、宝島社)他、論文多数

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