原材料費やエネルギー価格の上昇で幅広い領域で物価が上昇し、ファストフード業界でも値上げラッシュが続いている。そんななか、ハンバーガーチェーン業界最大手で「安くて速い」がウリのマクドナルドでも値上げが行われ、国産野菜を使用し比較的高価格で知られるモスバーガーと一部商品で「価格がほぼ変わらない」状況になり、類似商品ではマックの価格がモスを上回るケースも。ネット上では「値段が変わらんのならモスでええ」などと話題を呼んでいるようだ――。
マックは1月、一律値上げを実施。「ハンバーガー」は150円(消費税込み/一部店舗では異なる/以下同)から170円に、「チーズバーガー」は180円から200円に、「マックフライポテト(Sサイズ)」は160円から190円に、「チキンマックナゲット(5ピース)は200円から240円に価格改定。ファンが多い「ダブルチーズバーガー」は370円から400円になったことに悲鳴の声も聞かれる。
「マックの値上げはこの1年で3回目となるが、強気の姿勢を維持できる背景には客離れが起きていないことがあげられる。2022年12月期の営業利益(338億円)は前年からダウンこそしたものの2.1%減にとどまっており、前年が最高益だったことを踏まえれば、現在のコスト上昇局面ではかなり優秀な数字。定番の『ハンバーガー』と『プレミアムローストコーヒー(Sサイズ)』を2つ注文しても290円と300円以下に収まる一方、400円以上する期間限定のユニークな商品も頻繁に投入。パティの枚数が2倍になる夜マックや、朝限定の『ソーセージマフィン』や『エッグマックマフィン』が食べられる朝マックも固定客を獲得しており、バランスの良いメニュー戦略がうまくいっている」(外食業界関係者)
一方、モスバーガーも昨年7月に一律値上げを実施。「モスバーガー」は390円から410円に、「ハンバーガー」は220円から240円に、「フレンチフライポテトS」は230円から250円に、「アイスコーヒーS」は230円から240円に改定された。
<今のマックならモス買うかも>
両社ともに値上げを行うなか、たとえばフィッシュフライを使用するマックの「フィレオフィッシュ」は370円で、モスの「フィッシュバーガー」は380円。マックの「ダブルチーズバーガー」は400円で、モスの「ダブルチーズバーガー」は410円となるなど、類似商品としては価格がほぼ変わらないメニューも見られるように。さらには、チキンカツとレタスを使用するマックの「チキンフィレオ」は380円で、チキンカツとキャベツを使用するモスの「チキンバーガー」は320円、チキンカツと甘辛ダレを使用するマックの「油淋鶏チキン」は440円で、同様のモスの「和風旨(うま)だれのとり竜田(たつた)バーガー ~くし切りレモン添え~」は410円など、マックのほうがモスより価格が上回る商品もある。
そのため、ネット上には以下のような声もあがっている。
<今のマックならモス買うかも>(原文ママ/以下同)
<同じ値段出すなら普段食べないモスもええ>
<単品ならもうほとんど差無い>
<マクドに比べて劣っていた点が値段だけだからな その差が縮まれば自ずと再評価路線になる>
<値段が変わらんのならモスでええ>
<もうハンバーガーは高級品>
<マック大幅値上げでここからがガチの決戦>
この「価格逆転現象」について外食業界関係者はいう。
「モスは国産素材など質にこだわっているというイメージが強いが、マックも数年前に続発した品質トラブルを経て原材料の調達や品質管理に相当なコストと労力をかけており、両社に大きな差があるというわけではない。また、マックは繁華街など人通りの多い立地に大量の店舗を出店し、ピークタイムでもスピーディーに商品を提供できる体制を維持するために調理場のスタッフも多いため、人件費がかかっているという面もあるが、この注文から商品提供までのリードタイムが短いというのは、モスと比べて大きな優位点といえる。
味の面でいえば、モスのほうがヘルシーでマックはややジャンクフード感が強いという印象だが、消費者の好みの問題。多少提供時間がかかってもモスのファンはモスに行くだろうし、マックのファンは少し値上がりしてもメニュー全体でみればモスよりも低価格なマックに行く。なので、今回のマックの値上げで多くの客がマックからモスに流れるという現象が起きるとは考えにくい。
また、モスも高価格帯ながら根強いファンを持つ『とびきりハンバーグサンド』については一部商品を除いて価格を据え置くなど、値上げにメリハリをつけており、こちらも値上げで大きく業績に影響が出るとは考えにくい」
(文=Business Journal編集部)