投資会社トライベイキャピタル代表取締役の三浦清志容疑者が7日、4億2000万円を着服したとする業務上横領の容疑で東京地検特捜部に逮捕された。すでにトライベイは東京地検に詐欺罪で刑事告訴がなされ家宅捜索を受けていたが、同社の事業手法をめぐっては「ゆすり」「詐欺的」との声も出ている。また、10日付「FRIDAY DIGITAL」記事は、トライベイがコロナ給付金を不正に受給し、妻で国際政治学者の三浦瑠麗氏が会社の売上を操作するよう指南をしていたとも報道。トライベイの経営に瑠麗氏が関与していたのかどうかも焦点となっている。
トライベイは2019年、自社が手掛ける太陽光発電事業について、設立したSPC(特定目的会社)を受け皿として不動産会社・A社から10億円の出資を受けた。トライベイは太陽光パネル設置予定地である兵庫県の土地と事業権利について、それらを所有するB社から譲渡を受ける予定だったが、B社はトライベイから代金が支払われていないと主張して両社間で裁判に発展。トライベイが太陽光パネル設置に必要となる周辺住民の合意を得ていなかったことも判明し、事業は頓挫。A社はトライベイに10億円をだまし取られたとしてトライベイを詐欺罪で刑事告発していた。
このほかにもトライベイはトラブルを抱えていた。9日付「テレ朝news」記事によれば、宮城県内で他の事業者が太陽光発電事業の実施を予定していた土地に隣接する土地を、トライベイが買い占め。この事業者が発電事業を行うためにはトライベイが取得した土地に送電線を通す必要があったためトライベイと交渉したところ、トライベイから市場価格の10倍の価格で土地を買い取るよう求められ、事業を断念したという。事業者は「テレ朝news」の取材に対し、「ゆすりみたいなものです」と語っている。
その後、トライベイはその土地の売却に失敗し、自社で太陽光発電事業を行うとして数億円の出資金を集めたものの、水害が発生しやすい砂防指定地区であり地元住民の合意を得られず、ここでも事業が頓挫したという。
エリートビジネスマン・三浦氏の転落
今回、三浦氏が逮捕された容疑は業務上横領であり、会社の債務弁済などに当てる目的で預金を管理していた別の合同会社の口座の4億2000万円をトライベイの口座に送金させたというもの。8日付FNNプライムオンライン記事によれば、この4億2000万円のうち、2億7000万円は三浦氏が管理する別会社の資金繰りに充てられて、1億1000万円は三浦氏の個人的な借り入れの返済に充てられていたという。
「トライベイは事業の失敗が重なり資金難で首が回らない状況だった。経営が行き詰っていたことも影響してか、そのビジネスを進める手法も含めて、経営の実態は詐欺といわれても仕方がないものだった」(全国紙記者)
三浦氏は東京大学卒業後に外務省に入省。数年で退職した後はマッキンゼーやベインキャピタルなどの外資系コンサルティング会社、投資会社などを経てトライベイに参画したエリートビジネスマンとしても知られている。
「コンサルチックな綺麗な事業プランやビジネスモデルを描くのは得意だが、泥臭いビジネスの実務、事業には向いていない、典型的な高学歴エリートにありがちなタイプという印象。東大卒の中央官庁出身者は外資系のコンサルや金融から引く手あまたなので、勘違いして自身が経営者になった途端にうまくいかなくなったというパターンでは」(大手コンサルティング会社OB/1月25日付当サイト記事より)
三浦夫妻の今後
焦点となっているのが、トライベイの経営に妻の三浦瑠麗氏の関与があったのかどうかだ。
太陽光発電事業をめぐっては、これまで瑠麗氏は公の場で積極的な推進を訴えていたことも知られている。たとえば、1月24日付東京新聞によれば、2020~21年の政府の成長戦略会議では、瑠麗氏はそのメンバーとして次のように「自前の資料を用意し、複数回にわたり太陽光発電を推進する発言をしてきた」(東京新聞より)という。
「荒廃農地の太陽光発電に対する転用の件について、ぜひやっていただきたい」
「非常にポテンシャルの高い、例えば屋根のせの太陽光と、小規模の荒廃農地に対する太陽光パネルの設置などに関しては、もう少しスピードアップしていかないと」
また、1月26日付「現代ビジネス」記事によれば、瑠麗氏は21年4月に成長戦略会議で提出した資料で「グリーン資産への証券投資」を提言し、同年9月にはトライベイキャピタルはグリーンボンド(環境債)の発売を発表したという。同記事執筆者のジャーナリスト、伊藤博敏氏は「『利益誘導』と捉えられても仕方がない」としている。
このほか、瑠麗氏の実妹が、清志氏が代表理事を務めていた一般社団法人エネルギー安全保障研究所(20年に解散)の理事に名を連ねていたこともわかっている。
「トライベイと、瑠麗氏が代表を務める山猫総合研究所は永田町の衆議院議員会館の真正面にあるビルの同じオフィスに同居しており、トライベイの内情は瑠麗氏に筒抜けだった。2人はオフィスで日常的に顔を合わせ、清志氏が来訪者と面談する場に瑠麗氏が同席することも珍しくなかった。グリーンボンドの件からもわかるように、瑠麗氏の言動とトライベイの経営が歩調を合わせていたのは事実。
また、トライベイのコロナ給付金受給などについて瑠麗氏が口をはさんでいたとするなら、その程度の関与はあったのかもしれない。ただ、瑠麗氏が実質的にトライベイの経営に関与していたと検察から判断されるほどのレベルではないだろう。瑠麗氏が立件に持ち込まれる可能性は低いとみられている」(全国紙記者)
気になるのが三浦夫妻の今後だが――。
「清志氏については、検察は間違いなく起訴に持ち込むので、トライベイの清算などで清志氏はそれなりの額の負債を抱えることになる可能性もある。一方、売れっ子コメンテーターだった瑠麗氏もテレビや講演などの仕事はなくなり、大学や研究機関など組織にも属しておらず、残るのは青山学院大学の非常勤講師の仕事くらいだが、この仕事もどうなるかわからない。収入的には厳しくなり、Instagramなどで披露してきたセレブ生活は送れなくなるかもしれない」(週刊誌記者)
(文=Business Journal編集部)